日本で最も熱い現代音楽──佐村河内守 交響曲第一番《HIROSHIMA》

ご存知のように、佐村河内氏の件は種々の問題を孕んでおりますが、あえてこの記事を残しているものです。関連記事としてはこちらもご覧ください。

今回の問題についての感想

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昨日今日と少し涼しいですが、今日も熱い音楽を。
今最も熱い現代音楽かもしれません。佐村河内守の交響曲第一番《HIROSHIMA》を、みなとみらいホールで聴いてきました。
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音楽の印象

音楽は、幾重にも折り重ねられた静謐と爆発の繰り返し。原爆の投下、被爆者の苦しみ、被爆者の怒り、そして絶望。それらが繰り返し繰り返し現れてくるように聞こえてきました。
先日からCDを何度か聞いているのですが、曲の構成が我々の聴き知ったものと異なるようです。知らず知らずに私はソナタ形式を探そうとしているのですが、私にはうまく見つけられません。
代わりに、何人もの作曲家のイメージを見つける事になります。メシアン、レスピーギ、ニールセン、ブルックナー、そしてマーラー。
こうなると、こうしたイメージのコラージュとして理解すると、かなり面白い聴き方をすることができます。

フィナーレ

暗い色調の音楽は、フィナーレで、やっと調性がメジャーとなり、救済へと至ります。
このフィナーレは、マーラーが二番や三番で構築した壮大なフィナーレを思い起こさせる程のものです。マーラー二番のフィナーレを初めて聴いた時(小学六年生の時)私の中ではここまでやってしまっていいのか、と思うほど戸惑ったのを覚えています。こんなにもフィナーレらしいフィナーレは、いかがなものかという違和感でした。
今日の《HIROSHIMA》のフィナーレもやはりそういうもの。ただ、今の私は、こうして当たり前のものをきちんと作れるということが凄いのだ、ということを知っています。
また、単なる救済でありながらもチューバとコントラバスが低音でなにか水を差すような旋律を奏でます。単なるカタルシスではない、という予感。ここは本当に感動しました。

音列

もちろん、だからといってオリジナリティがないとか、曲の印象がバラバラといったようなことはありません。一貫して、BACGisの4つ音を中心とするテーマが流れています。循環形式というか、変奏曲というか。あるいは変奏曲に近いのかもしれません。
この4つの音がBACHとくるとバッハのフーガの技法になりますし、ショスタコーヴィチ十番で執拗に登場するDSCHの音列になります。そんなことも思い出しながら聴いていました。

打楽器

また、破壊的なまでに凄まじい打楽器群の使い方。こんなにオケで大音響を聴いたのは初めてかもしれません。一番前の席ならきっと凄いことになっていたはず。今日は前から十五列目でしたが、それでもあの凄まじさでしたので。ティンパニー、スネアドラム、大太鼓の全力打撃は凄いですよ。

ご本人の登場

どのツアー開場でもそうなのかもしれませんが、佐村河内守さんご本人が最後に舞台に上がられ、スタンディング・オベーションを受けていましたね。胸が熱くなります。
ベートーヴェンと同じく全聾ながら交響曲を書いてしまったという事実。ベートーヴェンは、自分に向けられた喝采を理解できなかったという逸話が残っていますが、今日の佐村河内さんは、オケのメンバーに感謝を表してから、客席のほうに、手話でありがとう、と言ってました。意外にも気さくな感じを受けました。もっと鬼気迫る感じの方かと思っていたので。

終わりに

みなとみらいの入り口、いつもに増して人がたくさん並んでいて、客足が多かったことがよくわかります。ただ、こんなに並んでいるのは初めて観たので、ダブルブッキングが起きているんじゃないか、と心配になるほどでした。まあそういうことはありませんでしたが。
あとは、曲が終わって拍手をしている時に、座席に辿り着いたお客さんが数名いました。まさか、終わるまで外で待たされていたということはないでしょうけれどちょっと心配してしまいました。
みなとみらいの音は素晴らしかったですよ。残響が天井を走り回るのがよく聞こえました。本当によくまとまって輪郭のある残響だと思います。また行きたいですね、みなとみらいホール。
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東京芸術劇場のサウンド──読売日響《アメリカン・プログラム》

 ジメジメした一日ですが、今年導入したエアコンのお陰で自室で仕事ができて嬉しいかぎり。スタバに行かなくても済んでいます。

はじめに

今日も、朝からiTunesに入った《シンフォニック・ダンス》を聴いたり、全曲盤《ウェスト・サイド・ストーリー》を聴いたり。




右側のリンク、ホセ・カレーラスとキリ・テ・カナワのバージョンは、オリジナル編成です。エレキギターがカッコイイ。サウンドもキレがあります。
今日も、昨日の読売日響の《アメリカン・プログラム》の記憶を、さらにたどってみます。

《シンフォニック・ダンス》

ヒュー・ウルフのテンポは、私には中庸から少し遅め、という感覚でした。テンポを大袈裟に動かすことなく、インテンポに徹した演奏だったかと。これは、おそらくはジャズの文脈で捉えるとするなら妥当なものかと思います。 《シンフォニック・ダンス》のMamboのところで、弦にスイングを要求するところ、身体全体を使って
Mamboのところは、オケメンバーが”Mambo!!”と叫ぶんですが、ビオラの最前列のお二人が、身を乗り出して録音用マイクに向かって顔を真赤にして楽しそうに叫んでいたのも印象的。音楽やって楽しい、という感覚が伝わってきて胸が熱くなりました。

《ニュー・イングランドの3つの場所》


アイヴスの《ニュー・イングランドの3つの場所》は実に興味深いです。一曲目”The St. Gaudens in Boston Common”は静謐な音楽。武満の《弦楽のためのレクイエム》を思い出しながら聴きました。
二曲目の Putnum’s Campは、マーチング・バンドの音楽が、少しずつ改鋳されて、無調とポリリズムへと変容していくのが鮮やかで面白いです。さすがに読響メンバーも演奏が終わると汗を拭っていました。難しい曲です。
三曲目は”The Housatonic at Stockbridge”、最初はララバイ。フォスターか黒人霊歌のような旋律なのですが、これも徐々に形が崩れていき、無調とポリリズムという不安の高揚へと至ります。なんだろう、このペシミズムは。。
この曲、”American Tapestry”というアルバムで聞くことができます。

東京芸術劇場のサウンド

音響の評判が良くなかった印象の東京芸術劇場ですが、確かに少し不満はあるものの、総じて音響を楽しめました。
私が座っていた前列正面の音響が今ひとつなのは知っていましたが、これがどうして、今回のプログラムだとすごくハマります。繊細な弦楽器のニュアンスを聞き取れますし、遠くの方から金管群がリバーヴを伴って押し寄せてきます。ホールのリバーヴ感は少し効きすぎに思えましたが、元来リヴァーヴ感が好きなので問題ないです。ただ、リヴァーヴが高音域に偏って聞こえるのが気になる方がいるかもしれません。
個人的には、病みつきになりそうなサウンドです。

おまけ

昨日の《シンフォニック・ダンス》聴いて、無性に楽器が吹きたくなったので、家でこっそりサックスを吹きました。久々すぎるのですが、指は覚えているものです。多分、ですが、指を動かすこと、くわえて旋律を考えて即座に繰り出すこと、譜面を読むこと、を続ければ、脳が活性化する、はず。。

終わりに

明日は、初台で《三文オペラ》です。どんな舞台なのか、楽しみです。

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失神寸前──読売日響《アメリカン・プログラム》


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私の上司はメリハリのある勤務を実践しておられるので、私も真似をしようとしましたが、どうも馴れないことはするものではないようです。無理やり仕事終えて後ろ髪を引かれる思いで会社を出て池袋に向かいました。
私は、さる方の影響で、オケを最前列で聴くという悦楽に目覚めましたが、今回もやっぱり最前列。音に包まれて日頃の芥を流れ落としました。

読売日響 第2回読響メトロポリタン・シリーズ

  • バーンスタイン:キャンディード序曲
  • アイヴズ:ニュー・イングランドの3つの場所
  • ガーシュイン:パリのアメリカ人
  • バーンスタイン:シンフォニック・ダンス

指揮:ヒュー・ウルフ/読売日本交響楽団
2013年7月12日 19時 東京芸術劇場
アイヴスの曲は未聴でしたが、そのほかはいずれも見に染みこむぐらい聞いている曲なので、本当に楽しかったですよ。
特に後半のシンフォニック・ダンス。
実演は、20年ぐらいまえに、佐渡裕指揮のシエナ・ウインド・オーケストラで聴いたことありましたが、オケ版は初めてかもしれません。
っつうか、プロローグの最後のところ、ドラムがホイッスルを吹いた瞬間、頭に血が上りました。頭がすーっと、後ろにひっぱられるような感じ。これ、失神する瞬間なんだな、と思いました。よく、コンサートで失神するという話を聞きますが、そんなわけないだろ、と思ってましたが、どうやらそういうこともあるみたい。
明日に続きます。

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ロマン派全開──シュトラウスとブルッフ

今日は、上岡敏之と日フィルで、シュトラウスとブルッフを聞きに初台のオペラシティに行って来ました。

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今回の日フィルも圧倒的で、ほんとうに来てよかったですよ。。

ブルッフ

前半のブルッフ、郷古廉さんのヴァイオリンがあまりにすごすぎるわけです。

第二楽章の甘美で官能的なところは圧倒的でした。

音は豪放な部分もあれば繊細に歌うこともできるところで、指揮の上岡さんがたくみに導いていたとはいえ、圧巻でした。

今日も滂沱でした。

郷古さんは、1993年生まれの二十歳なんですが、なんだかあまりに出来上がった大人な演奏をしてしまっていて、早熟な天才だと思います。これから壁に何度もぶち当たるんでしょうけれど全部飛び越えてしまいそうですね。

演奏が終わったあともオケのメンバーからも賛嘆の眼差しを受けていましたし、客席も大喝采でした。

アンコールで弾いた曲がシュトラウスのオペラ「ダフネ」のフレーズを使ったエチュードですよ。考えていたんでしょうけれど、後半のアルプス交響曲と絡めた選曲で、全く粋なことをしてくれるものです。

アルプス交響曲

後半のアルプス交響曲も、圧倒的でした。

上岡さんの指揮は、雄大で、マゼールのアルプス交響曲に似た印象を受けました。テンポは中庸から少し遅いぐらい。日本人的な「粘り」がなく、スマートで洗練された正統派ドイツ的演奏と思いました。

これは、もうセリフ無しのオペラといってもいいのではないでしょうか。それぐらい映像が思い浮かぶいい演奏でした。

日フィルも上岡さんの要求によく応えて、疵も乱れも殆どない演奏だったと思います。日フィル、やっぱり巧いですよ。今回もそう思いました。

ただ、ホールの音響的に言うと、私の席(10列の右側)から音が回っているような印象を受けました。

アルプス交響曲の隠れテーマ

今回の演奏会のパンフレットの広瀬大介さんの解説が面白いですね。

アルプス交響曲は単なる写実交響曲ではなく、「アンチクリスト」という隠れテーマがあるという論点でした。

この論点、知ってはいましたが、まとめてくださっていて有り難いばかりです。

「アンチ・クリスト」というのはニーチェの思想ですが、もう一つシュトラウスが作曲したニーチェがらみの曲が「ツァラトゥストラはかく語りき」です。

で、ですね、アルプス交響曲には「ツァラトゥストラはかく語りき」の冒頭の上行していくファンファーレのフレーズが随所に登場するのですよ。広瀬氏もパンフレットで指摘しています。

そればかりではなく、上行ファンファーレの下降バージョンも最終部に登場します。

ここまでは、広瀬さんの解説にもこの下降ファンファーレは「自然の前に打ちひしがれる姿」として指摘されています。

実はですね、この下降バージョンのファンファーレは、オペラ「アラベラ」が、最後に水を持って階段を降りてくるところでも登場します。

これは新国立劇場のオペラ・トークで評論家の田辺秀樹さんが指摘されていたことです。ここでは、「ツァラトゥストラ」のような男性的な上昇志向に対して、女性的な志向なのである、とおっしゃっていたと記憶しています。

終わりに

やっぱりドイツ後期ロマン派は素晴らしい、とあらためて思いました。官能と甘美があるのですね。

来週からまた戦う勇気がわきました。

明日は勉強やら日常業務やらをこなす予定。やることがたくさん。

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夏休み(?)五日目 東京フィルで「グレの歌」を聞く

東京フィル 特別演奏会「グレの歌」を聞いてきました。

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「グレの歌」の初演は1913年2月23日なんだそうです。つまり、ちょうど今日で100年に当たります。

音響

難しい曲です。編成が大きすぎて、実演での音響が難しいのでしょう。

オペラであればピットの中にオケを入れますので、オケと歌手のバランスが取れるのですが、舞台にオケをあげるとバランスを取るのが極めて難しくなります。

ワーグナーなどのオペラの場合、ピットの床をさげて音響のバランスを取ります。またバイロイトでは、そもそもピットの上に蓋がしてあって、音のバランスを取ります。

なので、これだけの大編成と歌手を一度に舞台に上げること自体がむずかしいと言うことなのです。歌手の方の声量という議論もありますが、それだけではないと感じます。

強力なはずの新国立劇場合唱団も曇った音になってしまいました。舞台の一番奥からなので私の席まで届かなかったのでしょうか。

これはオーチャードホールならではの問題でもあると考えました。

音が回っていて芯がなくなっているのです。

私が座ったのは、一階の少し後ろの方でした。今日の座席配置でいうと前から20列目ぐらいです。ちょうど二階の張り出しの下にかかるかかからないか、というところです。席特有の問題なのでしょうか。

これがPA通しているなら、PA卓でグリグリボリュームを動かしたい、と心底感じました。

やはり一番前にしておくべきでした。席をとったのが昨日でしたので、座席をほとんど選べなかったのです。悔いが残ります。

演奏について

演奏の方ですが、こうした事情もあるので私に評価できるかどうか。あえて書くのは控えます。

そんな中ですが、山鳩を歌った加納さんが素晴らしかったのがとても印象的です。音響の問題をくぐり抜けて私のところまで芯のある声が届きました。感動です。

オケも良く鳴っていて圧巻でした。ハープ四本とか、クラリネット七本とか、普通にはあり得ない編成でしたので、オケの多機能性にあらためて驚きました。

楽曲について

「グレの歌」を実演で聞くのはもちろん初めてです。予習は小澤盤、インバル盤で行いました。レコーディングのバランスに慣れてしまい、前述の通り音響に違和感を覚えたのでしょう。

楽曲的には、所々で「神々の黄昏」が聞こえました。マーラーから土俗民謡性を差し引いて、さらに無調を推し進めたようにも聞こえました。

あとは。。。

どうでもいいのですが、第一部演奏中に一階後方客席でトラブルがあったらしく、休憩中は慌ただしい感じでした。そうした出来事も気分に影響したみたいです。

珍しくエラソーですいません。ですが、これは誰のせいでもありませんので、書いて見ることにしました。

大入り袋

今日は、大入りだったようで、大入り袋に入った切手を頂きました。ありがとうございます!

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終演後

終演後、懐かしい渋谷タワーレコードに行ってみました。多分五年ぶりぐらいです。七階のクラシック売り場は模様替えしていましたね。

この売り場の優れているのは、書籍売り場かも。音楽書や楽譜を見比べられるのは快感でした。

明日は、骨休めの予定。

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夏休み(?)二日目 下野竜也指揮読売日響でブルックナー交響曲第5番

行ってきました、下野竜也指揮読売日響でブルックナー交響曲第5番。

みんな大好きブルックナー。

私も大好きです。でも、さすがにみんなに聞こえるぐらい大きな音で、ブル5第二楽章を鼻歌を歌う方がいるのには驚きました。

 

アウフヘーベン

それにしても、今回はこの曲のことをよりいっそう理解できた気がします。

第四楽章の冒頭で、第一楽章と第二楽章のテーマが出ますが、それをクラリネットが否定するんですね。

一語、「否」、みたいな。

で、クラリネットの否定に屈して、弦楽器がフーガを奏で始める、という構造。

ほんと、弁証法的です。

確か、ベートーヴェン第九の四楽章もそんな感じで、止揚していくんですよね。

本当にドイツ的だと思います。

 

論理的

そんな、論理的なドイツ音楽を下野竜也さんは、論理的緻密さで構築しきっていたように思います。もう本当に隙のない論理性で、マチュピチュの石垣のようにナイフが隙間に入らないぐらいぴったりと組まれた石組みの構造でした。

あとは一つ一つの石組みをきちんと見せてくれました。たとえば、ゲネラルパウゼの長さが残響を意識して取られているなど。

そのため、くっきりと鮮やかに個々の構造が見て取れたと思います。

ただ、私の勉強不足なんですが、そうすると全体の流れを捉えるのが難しくなったなあ、と思いました。自分が何処にいるのかはわかりますが、その場所がどういう意味を持つのか、認識するのが難しかったように思います。

テンポはかなり緩く、インテンポ。もちろん、加速するところは加速しますが、過度なテンポチェンジはありませんでした。こういう淡々としたところも論理的に思えた所以と思います。

でも、さすがに最終楽章最終部はみんな熱くなっていて、ビオラの方が凄くうれしそうに弾いていたのが印象的です。

ホールの音

全体の音量、音圧が小さく思えたのは、ホールと私の席のせいでしょう。今日もいつものように一番前で聴いたので、金管の音が頭上を抜けていったように思いました。以下のウェブでもそうしたことが指摘してあります。もうすこし後ろの席にすれば良かったのですね。

http://www.zankyo.com/hall/tokyo_detail.html

ステージから離れる程、両サイドの壁が遠くなって行くため、1・2階の中央席で聴くと音が頭の上を通過するようで落ち着かない。比較的高い壁のある2階の両サイドの席が、音が鮮明で落ち着いて聞こえる。

 

恐怖のエスカレータ

さて、先ほどの記事でも触れたように東京芸術劇場に来るのは久しぶりでした。恐怖の直線エスカレーターは以下のように作り替えられていました。

 

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上から見るとこんな感じでした。やっぱり怖いかも。。

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明日は縁あって上野に出張るかも。。

それではまた。

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日フィル定期でストコフキーを聴く!

日本フィル定期公演に行ってまいりました。

仕事で行けなくなるところでしたが、幸いなことに。感謝。

昨年の山田和樹とおなじく、今日もまたすごい演奏会でした。

結論から言ってしまいますが、ストコフスキー編曲の展覧会の絵がすごくてすごくて。

 

ストコフスキー版展覧会の絵

「展覧会の絵」は、もともとはムソルグスキーのピアノ曲ですが、フランスの作曲家モーリス・ラヴェルによりオーケストラバージョンが作られ、これがオケで演奏される際には定番になっています。

一方、今日は指揮者のレオポルド・ストコフスキーにより編曲されたバージョンでした。ファイル:Leopold Stokowski LOC 35520u.jpg

ストコフスキーは、戦前から戦後にかけてアメリカで活躍したイギリス出身の指揮者です。展覧会の絵の他にも編曲を手がけていて、有名なのは、バッハのトッカータとフーガニ短調BWV565のオケ版です。写真がストコフスキー。

今回のバージョン、何百回も聴いたラヴェル版を知っているだけに、そのあまりにも無骨でドロドロとしたサウンドに驚き続けました。

ラヴェル版と違うところはたくさんありましたが、なかでもラヴェル版ではトランペットが演奏するプロムナードのテーマが、弦楽合奏で演奏されるのが相違点の顕著な例です。

こちらをどうぞ。

面白いのは、それでもやはりラヴェル版と同じところがあって、アルトサクソフォーンのソロは残っていました。

山田和樹の棒は、変幻自在にテンポを動かしてダイナミックな音を作っているように思います。ちょっとやり過ぎと思う人もいるかもしれませんが、私は楽しんで聴くことが出来ました。

つうか、オケの方々、みんな楽しそうですよね。あれだけ楽器をならせたら楽しいはずです。

「展覧会の絵」が終わったあと、日フィルのメンバーの方々、なんだかうれしそうでした。

山田和樹は、オケのモラルを意識した選曲をしているのかなあ、とも。やっぱり技術だけではなく人を動かす力もじゅうようだなあ、と。

最後、山田和樹がオケから拍手もらっていたのですが、オケメンバーに大事にされている感じがよくわかりました。

ヴァレーズのチューニング

休憩後に演奏されたヴァレーズの「チューニング・アップ」という曲もめちゃ面白い。休憩が終わってオケのかたが入ってくるんですが、なぜか山田和樹も一緒に。

あれ、おかしいなあ、と思ったら、おもむろにチューニングが始まって、いよいよか、とおもったら、それが曲の始まりでした。山田和樹も急に指揮始めちゃうし。

私にはショスタコーヴィチとホルストが聞こえました。ベト7も聞こえたみたいです。

野平さんがいらしていた!

あとは、一曲目に演奏した野平一郎の「グリーティング・プレリュード」が素敵でした。あの誕生日のテーマをモティーフにした曲です。コンミスの江口さんのソロが素敵すぎ。

で、曲が終わったら山田和樹が客席のほうをみて誰かを手招きするんですが、そしたら、なんと野平一郎が客席から出ていらして、舞台上にあがってこられたのにはびっくりしました。もちろん満場の拍手とともに。

終わりに

日本フィルは公益法人化に向けて財政状況を健全化しなければならず、まずは債務を片付けようとしているようです。ずいぶん大変なようです。私もほんの少しだけ募金して協力しました。

では、フォースとともにあらんことを。

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スター・ウォーズ・イン・コンサートを聴いてきました。

ベスト・オブ・スター・ウォーズ~ミュージック・アンソロジー~
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有楽町の国際フォーラムで、スター・ウォーズ・イン・コンサートを聴いてきました。

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エピソード1から6までを映像と生オケで堪能する二時間は今までのエンタテインメントとは違う楽しみでした。

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私のスターウォーズは1990年ごろから始まりましたので、リアルタイムではありませんが、エピソード4は飽きるほど繰り返しビデオで観ました。セリフは大分覚えていたので、今日流れた映像はどれも思い出深いものばかりでした。

ナレーションとして登場したのは、C3PO役のアンソニー・ダニエルズでした。アメリカのショウビズな感じで、ナレーションに応じた表情の付け方がうまくて、ああ、これがアメリカなんですなあ、と感心しました。

エピソード4とエピソード1の最後の表彰式に涙してしまうのはなぜでしょうかね。その後の苦難をしっているからなのでしょう、きっと。

しかし、東京フィルの方々、特に金管の方々にとって、この機会は垂涎だったのでしょう。私も臆面なく羨ましく思いました。

私は元木管ですけど。

昔、金管の友人と二人で万博記念公園でスターウォーズテーマを吹き続けた淡い思い出。と言うか、今回のコンサートは彼が見つけておしえてもらったんですけどね。

メインテーマはもちろんですが、レイアのテーマとか、ヨーダのテーマの美しさには舌を巻きました。涙出ますよ、この歳になると。チェロのフレーズ、ホルンのフレーズに弱いです。

ライトモティーフを使った、ワーグナーの楽劇の後継者の一人がこのジョン・ウィリアムズですからね。ちりばめられた材料がまぶしくて仕方がなかったです。

タトウィーンの酒場の音楽も演奏されましたが、あそこはジャズですよね。オケのメンバーだと思われますが、ジャズバンドを編成してうまいこと演奏していました。スチールドラムとかエラクうまいし、普通にコンバス弾いてた人が、4ビートのベースラインを刻んでいてたまげました。さすがオケ奏者ともなると何でも出来るんですね。。

今日はトランペットもホルンも全開でした。

ただ、PAを噛ませているので音質面は全体的に??でしたけれど。

 

最後は、スタンディングオベーションで幕切れとなりました。盛り上がりましたよ!

 

カミさんも楽しんでくれたようで良かったです。

 

ちなみに、ライトセーバーは使用厳禁です。

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本当に沢山の方がいらしていました。

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ジョン・ウィリアムズへの寄せ書きを書く人々。私も書きました。

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興味深いこと。休憩中トイレに並んだところ、私の前にいらっしゃったのはもっとも有名なあの国の駐日大使でした。あまりに至近距離でした。

 

では。フォースとともにあらんことを。

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日フィル横浜定期で新世界を聴く。

!https://lh3.googleusercontent.com/-7J2srXqFKAs/TwmUXdpEg4I/AAAAAAAAFfE/_8LicZQAy3Q/s288/IMG_0451.JPG!
少し書くのが出遅れました。昨日1月7日にみなとみらいホールにて日フィル横浜定期を聞いてきました。

基本情報

曲目

* モーツァルト 「フィガロの結婚」序曲
* チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲
* ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」
* ヨハン・シュトラウス ピチカートポルカ(アンコール)
* ブラームス ハンガリー舞曲第5番(アンコール)

演奏

指揮:小林研一郎
ヴァイオリン:千住真理子
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団

曲目について

フィガロの結婚序曲

最初の「フィガロの結婚」は、まだ暖まりきっておらず、コバケンさんもかなり硬い感じで、ちょっと脂ののらない感じでした。まだオケに任せきれていないような指揮で、ちょっと心配になりました。

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲

次は、千住真理子との協演で、チャイコのヴァイオリン協奏曲でした。千住真理子の演奏については、昔からなぜか男らしさを感じていました。10年以上前に、千住真理子のバッハのソナタとパルティータ全曲演奏会に行ったことがありまして、そのときから感じていることです。今日もやはりそう言う印象を持ちました。太い音はさすがですし、(当たり前かもしれませんが)旋律的なミスは一つもありませんでした。そのあたりの集中力はすごいです。ただ、ちょっと男らしく、乱れが生じるところもあり、面白いなあ、と思いました。

新世界より

「新世界より」は、コバケンさんの指揮を堪能しました。彼は、顔だけで指揮をしているのではないか、と思うほどです。小刻みに頭を振ってクリックを出し、手は天井に向けられ、まるで天国に向かって音を出せ、と言わんばかりの指揮ぶりで、これが炎のコバケンの由来なのだなあ、と思いました。途中、オケに祈るように任せたりするあたりはさすがです。舞曲のような場面では、きちんとクリックを出してテンポを掌中にする、といった感じです。私は第4楽章で感動しきってしまい、涙が止まらなくなりました。ここのところ、日フィルには泣かされっぱなしです。

アンコール

アンコールはヨハン・シュトラウスの「ピチカート・ポルカ」とブラームスのハンガリー舞曲第五番でした。最初のヨハン・シュトラウスの「ピチカード・ポルカ」は、おそらくは異端な演奏です。タメを過剰にとっているのですが、これはわざとやっている、というのがよく分かります。茶目っ気のある演奏というところです。次に演奏したのが、ブラームスのハンガリー舞曲でした。ハンガリーは日本に似ているので、日本的に演奏してみます、とおっしゃっての演奏でしたが、そのとおり、これも演歌的なタメをとった、冗談のような演奏でした。でもすごく楽しかった。冗談でもちゃんとやると芸術です。

シーズンファイナルパーティー

秋シーズンが終わりということで、ファイナルパーティーがありました。半年前に引き続き私もご相伴にあずかりました。ここで、日フィルメンバーによる室内楽が演奏されました。
!https://lh6.googleusercontent.com/-i_-jkrkL_zU/TwkaAtiSNeI/AAAAAAAAFec/FkJpb4LfpTE/s400/IMG_6830.JPG!
* 愛の挨拶
* タイス瞑想曲
* チャルダーシュ
チャルダーシュ、坪井さんのヴァイオリン、すごかったです。うますぎます。
ビールいただいてほろ酔い気分でした。
コバケンさんも登場して、スピーチされました。
!https://lh4.googleusercontent.com/-4ZGWlNSH0PA/TwkaGwPrONI/AAAAAAAAFek/aF9sl_Xxvl4/s288/IMG_6824.JPG!
日フィル、財政的に大変なのだとか。私もコンサートに行ける範囲でいかないと、と思いました。

まとめ

やっぱり、日フィルの演奏会は楽しいです。病みつきになりますね。1月20日のサントリーもいけないなあ、と画策中ですが。仕事忙しすぎる。。明日も仕事に行きます。
※初出に名称の誤りがありました。お詫び申し上げます。

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会社帰りに夢があった。──日本フィル定期演奏会

!https://lh6.googleusercontent.com/-MlwxKm6N094/TuMijLO-m5I/AAAAAAAAFaE/-Bzvw_73oH0/s400/%2525E5%252586%252599%2525E7%25259C%25259F.JPG!
会社帰りにサントリーホールに行けるという僥倖。私の夢でしたが、ありがたいことにこれも叶ってしまいました。仕事たまってますが、月曜日に早出しますので許してください。
曲目は以下の通りです。
* ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
* モーツァルト;交響曲第31番「パリ」
* ベルク:ルル組曲
* ラヴェル:ラ・ヴァルス
うーん、この組み合わせは、少し不思議なんですが、私的には垂涎ものでした。これはオールパリプログラムなのだそうです。「ルル」の全曲盤初演がパリだから、ということだそうです。ブーレーズが振ったあのCDのこと。。そうか、なるほど。。
指揮者は、1979年生まれの俊英、山田和樹氏です。もちろん初めて聴くのですが、経歴をみるとすごいことになっています。東京芸大でコバケンと松尾葉子に師事し、2009年にブザンソン国際指揮者コンクールで優勝してしまう。その後BBC交響楽団とかパリ管弦楽団を振って、再演を決めてしまう。N響の副指揮者。で、32歳ですか。。

ビゼー&モーツァルト:二つのハ長調交響曲
山田和樹
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前半のドビュッシーに泣いた。。

山田さん、最初のフルートソロで、手をほとんど動かさなかったです。最初をほとんどフルートに任せてしまった感じ。その後も、オケにクリックを正確に与えるようなことはなく、ダイナミズムとクリティカルなタイミングを指示するのみ。大時代的な杓子定規なものはないかんじです。その指揮ぶりは、なんだか天から振ってくる音を拾い上げて、オケに伝えていると思えるぐらいです。
実は、半年ほど前にも日フィルの「牧神の午後への前奏曲」を聴いているんですが、今回は落涙度二倍ぐらいでした。弦のうねりが美しすぎて。癒されました。

ルル組曲で震えた。

ルル組曲、さすがにこの曲は難曲です。さすがの第一楽章の冒頭は、いろいろな音のパーツがあちこちで錯綜しているような感じでした。しかし、中盤に向かっては徐々にオケも暖まってきた感じで、充実した響きを見せてくれたように思います。
数ある見せ場では、私のイメージを超えたカッコよさににんまりしながら聞いていました。弦楽器がうねり歌うところとか、トランペットが泣き叫ぶところとか、サックスの媚態のような音なんかが入り乱れて、忘我状態でした。
複雑で混乱にも聞こえるリズムと音程の中に通底する危険な抒情性に心が揺さぶられ、苦しくもあり快くもありました。十二音技法を使った危険で魅惑的な旋律群が幾重にも繰り出されてくるあたりは、ベルクもすごいですが、指揮者もオケの皆さんも本当にすごいです。それから、曲のダイナミクスレンジをきちんと聴かせる演奏でした。最高潮の部分、何度ものけぞりました。そうしたオケの機能性を十二分に楽しむことが出来ました。
ルルのアリアを歌うのは林正子さんでした。残念ながら私の席からは十分にその声質を確認することが出来ませんでした。座席は、P席の横、打楽器を目の前にしたような席で、林さんの背中を観ながら声を聴いていたような状況でしたので。ですが、ピッチの狂いもなく、膨らみのある豊かな声だったのではないか、と推しています。
このとき既に、私は座席を間違ったことに気づきました。S席にしておけば良かった、と。というか、最前列、全然空いていました。休憩時間に移れば良かった。。。(ウソ)。
この曲の最終楽章ですが、切り裂きジャックにルルが喉を掻き切られる場面があります。ブーレーズが振っているCDでは、ここでソプラノの強烈な悲鳴が録音されていて、ホラー映画のように死ぬほど怖いんですが、さすがにそれはありませんでした。ちょっと期待したんですが。それにしても、この場面でベルクが描くルルの断末魔は実に写実的で身震いするほどでした。首から血が噴き出し、大きく数回痙攣し、力を失い倒れていくルルの最後の姿が目に浮かびます。
個人的には、サックス奏者の端くれとして、サックスパートがとても気になりました。アルトでしたが、メチャいい音です。もちろん、マウスピースはラバーですので、ジャズのよなギラギラした感じや、ざらついた感じは全くないです。艶やかで滑らか、それでいてエッジを感じる音でした。心が洗われました。私には絶対に出せない音です。
ルルについては、こんな文章を書きましたので、よろしければどうぞ。
“<参考>「ルル」を巡る不思議なエピソード”:http://museum.projectmnh.com/2011/12/09235959.php

ラ・ヴァルスで盛り上がった。

最後のラ・ヴァルス。これがすごかった。この曲で盛り上がらない方がおかしいのですが、山田さん、ここでも相当盛り上げました。テンポは早々動かしませんでした。ただ、金管を歌わせるところは少しテンポをあげてアクセントをつけていたように聞こえました。最高潮のところは、全身で大きな振りを見せました。怒濤のフィナーレで、このときばかりは割れる拍手がフライング気味で、ブラボーの絶叫が飛び交いました。演奏後のオケの皆さんの顔も悦びに溢れている感じでした。

反省

今回の座席は、二階席のちょうどオケの左側面に面したところでした。これは完全に失敗でしたorz。オケの音が直接聞こえてくる感じがしません。一度ホール内で反射した音を聞いている感じです。間接音みたいな。最前列で聴いていたら、もっともっと感動したはず。悔やまれます。。

まとめ

山田和樹氏が千秋真一ばりの才能の持ち主であることが分かりました。しかしながら千秋真一よりも腰が低いし、オケにすごく気を遣っているのが分かります。最後なんて、オケの全パート立たせてたしなあ。
それから、今後は、座席選びは(家計も大事だが)悔いのなきようベストを尽くします。
今回の日フィル定期も本当に楽しかったです。
ラ・ヴァルスの感動の余韻に浸りながら、明日は新国に「こうもり」を観に行きます。

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