シェーンベルクの「モーゼとアロン」をめぐる果てしない悩みとチェリビダッケ氏のじわじわとした「こうもり序曲」
シェーンベルク:モーゼとアロン 全曲 ブーレーズ(ピエール)、ライヒ(ギュンター) 他 (2001/07/18) ソニーミュージックエンタテインメント |
バレンボイム率いるベルリン国立歌劇場が今秋来日しますが、演目はドン・ジョヴァンニ、トリスタンとイゾルデ、そしてモーゼとアロンです。どの公演も値段がお高めで行くのを諦めていたのですが、このところ少し引っかかりを感じていました。ドン・ジョヴァンニやトリスタンとイゾルデはメジャー級なのでこれから見られる可能性は高いでしょう。
でもモーゼとアロンは、この機会を逃すと一生見られないのではないか、と思えてならないのです。どうやらかなりアバンギャルドな演出のようでとても興味をそそられます。これを見れば、シェーンベルグについての理解が深まるきっかけにもなるでしょうし、旧約聖書の有名な物語を理解する助けにもなると思うのです。今週中をめどにもうしばらく考えてみることにします。
さて、今日はチェリビダッケさんが振られた「こうもり序曲」を考えてみたいと思います。
レクイエム ボックス チェリビダッケ(セルジュ)、ボニー(バーバラ) 他 (2004/10/20) 東芝EMI |
三回聴きました。
冒頭は中速ですが、オーボエのソロに入るとやはり他の演奏と比べて遅いかな、と言う気持はあります。しかし、遅いテンポをしっかりとコントロールしているのが分かるのです。そうですね、たとえるならば、飛行機を着陸させようと速度を落としながら下降をしていくのですが、失速寸前まで落としながらも絶対に失速しないぎりぎりの速度で、飛行機を滑走路まで導いている、そんなイメージです。
確かに異論も在るでしょうけれど、本当にチェリビダッケさんらしいこうもり序曲だと思います。この速度で演奏すると、曲の細部が拡大されて見えてくるんですよね。ウィナーワルツのもたり方もゆっくりとした速度なので、とてもよく見えてきます。これで踊るとなると少し大変そうですが。
それから、アッチェレランドしてくるところは鮮やかですね。ゆっくりとしたテンポだからこそ速度の変化を自在に操ることが出来るのではないでしょうか?
テンポは早いほうが良いのか、遅い方が良いのか、と言う議論はあまり生産的ではないと思いますが、少なくともこの演奏はチェリビダッケさんらしい個性的な仕上がりとなっていて、十分楽しむことが出来ます。
このCDには、「モルダウ」や「フィンガルの洞窟」なども収められていますが、こちらもやはり遅いテンポで、カラヤンやクーベリックの演奏に親しんでいる向きには違和感を感じることもあるかもしれません。でもこれも一つの解釈の解答なのだと思います。
それにしても、ミュンヘンフィルって巧いのですね。前にも書きましたが、この速度についてくるのはとても厳しいはず。多少の乱れはあるにしてもおおむねきちんとチェリビダッケさんの棒についてきていると思います。
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