ベルクのルルを食卓で

昨夜の夕食時、家人と一緒にベルクの「ルル」のDVDを見ました。とはいっても最初の30分ほどでしたが。映像は、クリスティーネ・シェーファーが脚光を浴びたグラインドボーンでの「ルル」公演。アンドリュー・デイヴィス指揮のロンドンフィルハーモニック管弦楽団。 この映像、おそらく初めて全曲通して観たオペラ映像です。これまでも何度か取り上げたと思います。

最初のあたり、第一場、画家とルル(シェーファー)の演技のきわどさに、二人で「怖いねー」などといいながら見ていたのですが、第二場で、シェーン博士とルルの過去が言及され、にわかに緊迫し始めて、食い入るように見てしまいました。今日は30分ほど見ておなかいっぱい。

しかし、奥深いドラマです。シェーン博士や画家、医事顧問官を死に至らしめる魔性の女としてのルル像という見方もありましょうし、逆に「踊り子」として、おそらくはつらい生活を送っていたに違いないルルが、シェーン博士にすくいあげられたという、救済物語としてみるとすると、ルルはシェーン博士のエゴの被害者なわけですね。最近ではどうも後者の読み方のほうがしっくり来るような気がしています。シェーファーの妖艶なルルをみると、どうしてもルルの「強さ」に見方が傾いてしまいますが、違う読み方もできると言うことのようです。

それにしても画家が死んだ医事顧問官にかける言葉が怖いです。

「私はあなたとかわりたいよ。彼女をあなたにかえすよ。その上に私の青春をあなたにあげよう」

ルルの魔力にすでに絡め取られていながらも、足をばたつかせて逃れようとする若き画家の恐れ。恐ろしい。恐ろしい。

また続きを見ることにいたしましょう。