バイロイト音楽祭/ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」第二幕&第三幕
バイロイト「トリスタンとイゾルデ」観ました。すごいですね。もう、キャスト全員がすごくてあっけにとられていました。イレーネ・テオリンの「愛の死」は壮絶で、しばらくは忘れられそうにないです。
そして、この場ではこれまであまり触れていなかったトリスタンを歌ったロベルト・ディーン・スミスもすばらしかったです。正確無比なピッチにヘルデンテノール的純粋無垢な力強さ。そしてブランゲーネのミシェル・ブリートもすばらしい。テオリンに負けない声量とぶれないピッチ、そしてなにより表情や挙措の一つ一つに込められたそこはかとない意味性の表現は映像で観て初めて感じた偉大さです。クルヴェナールのユッカ・ラジライネンもよかったですよ。新国ではヴォータンを歌っていた方ですが、クルヴェナールの苦悩に満ちた役柄をうまく歌っておられました。
演出はやはり60年代的なものでしたでしょうか。いずれの幕も、蛍光灯をうまく使った演出でした。第一幕では丸い蛍光灯が天井で揺れ動き、第二幕では天井の照明がすべて蛍光灯で、スイッチをいれると「M」の字を描いたりする。おそらくはマルケ王のMです。第三幕はトリスタンの病室ですが、古びた壁に蛍光灯が掛けられていて、ジリジリと時々点滅したりする。
この偉大なパフォーマンスを舞台下で支えた最大の立役者がペーター・シュナイダー。私は、もうこの方のワーグナーとシュトラウスにべた惚れ状態です。まだまだ聴いていない音源はたくさんあると思いますが、それでも私はこの方と巡りあったことに感謝します。
今年1月の東京フィルの定期演奏会では半径10メートル以内だったのですねえ、この方と。舞台下最前列でシュナイダーさんの指揮を仰ぎ見ながら涙したのが懐かしいです。
私は、つい1ヶ月前までは、クライバーが振る「トリスタンとイゾルデ」が決定版だ、と思っていたのですが、このシュナイダー版の「トリスタンとイゾルデ」は、クライバー盤に負けず劣らずのすばらしい演奏だと言うことがわかりました。こういう体験がPCとネットを通してできるなんて、本当にいい時代になりました。今後の日本や世界がどうなるかは皆目見当がつきませんが、こうした思い出をもてる時代に生きているのは少なくとも幸せなことだと思います。平和ボケも困りますが、こうして感動を原動力に生きることも大事です。
演奏の模様は、8月26日にNRKラジオで放送予定です。Operacastの特設ページにて詳細をごらんになれます。
Operacastの特設ページから、キャストを以下の通り引用します。
TRISTAN UND ISOLDE:
- Conductor Peter Schneider
- Production Christoph Marthaler
- Costumes and stage design Anna Viebrock
- Chorus director Eberhard Friedrich
- Tristan Robert Dean Smith
- König Marke Robert Holl
- Isolde Iréne Theorin
- Kurwenal Jukka Rasilainen
- Melot Ralf Lukas
- Brangäne Michelle Breedt
- Junger Seemann Clemens Bieber
- Ein Hirt Arnold Bezuyen
- Ein Steuermann Martin Snell
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