この二ヶ月ほど、なぜか読書できない日々が続いていたのですが、そうした鬱々とした日々は過ぎ去ったようです。ようやく単行本を再開することができました。「倒壊する巨塔」です。だいぶ前に、新聞の書評欄を読んだカミさんが教えてくれた本ですが、これは大いなる力作でしょう。読んで正解でした。
2001年9月11日に至る現在のイスラム原理主義とアメリカが対峙している歴史的経緯を明らかにしてくれるわけですが、正直申し上げて、イスラム現代史には少々疎かったものですから、実に刺激的な内容が盛りだくさんでした。
私はあの日を鮮明に覚えています。当時は会社から歩いて10分の寮に住んでいたのですが、ちょうど10時に帰宅して部屋でテレビをつけると、世界貿易センタービルから煙が上がっているライブ映像が映っていて、あれれ、これはひどい火事だなあ、と思って見ていると、突然画面の右側から黒い飛行機とおぼしき影が飛び込んできて、ビルから火炎ががあがるその瞬間をライブ映像で見てしまったのです。これは映画かと見まがうほどの映像。そのうちに、同時テロということで、航空機が乗っ取られて、ワシントンやらニューヨークやらで自爆テロをしている、とか、何機もの飛行機が乗っ取られた、とか、防空のためにF16が飛んだとか、まあそういったたぐいのニュースがどんどん飛び込んで来て、テレビに釘付け状態でした。これは、文明史上の大事件だ、と直感したのですが、それはどうやら当たったようでしたが、さすがにイラク戦争へと至とは思いませんでした。
1991年の湾岸戦争当時、トンデモ本に「この戦争は何十年も続くのだ」という予言がある、という記述を見つけたのですが、あれから20年の出来事を振り返ると、その予言が当たったと言うことではないか、と思ったものでした。
さて、今まで読んだところで、一番印象的だったのが、イスラム世界における反ユダヤ的思潮の源泉の一つがナチズムにあると言うこと。詳しくは書いていないのですが、戦後、ナチスの残党がエジプトで活動していたとのこと。ナセルのwikiのページに多少記述がありますので、間違いないでしょう。それから戦時中、ナチスが短波のアラブ語放送で反ユダヤ的宣伝活動をしていたとのこと。第二次大戦前はアラブにおいては反ユダヤ的風潮は少なかったそうですので、なんだかあっけにとられてしまいました。
急進的イスラム主義運動に火をつけたサイイド・クトゥブ、サダト暗殺に関わったアイマン・ザワヒリ、ビンラディングループの成功者であるムハンマド・ビンラディンと、その息子であるあのオサマ・ビンラディンなど、イスラム急進主義を巡る人々のドキュメントが連なっていくわけですが、私がいるのはまだ上巻の三分の二あたり。これからどのように展開していくのか。これはもう推理小説よりも興味深い。現実は小説より奇なり、でしたっけ。いや、これは興味深いを通り越していて、今後の世界を考える上で必読本なのかもしれません。
あともう数日はこの本を読み続けると思います。何とか読み終われるといいのですけれど。