湾岸戦争終了直後のペルシア湾岸。きわめて強力な生物化学兵器が作られていることをつかんだ米軍は特殊作戦の発動を決定した。ロッキードC-141輸送機を使ってデルタフォースを送り込み、イラクの生物化学兵器工場を急襲し、大量破壊兵器を壊滅させようという大胆な作戦任務にあたるウィル・ウェスターマン大佐とダグ・ハリス大佐の旧友コンビ。二人は、真夜中の道路への強行着陸に成功し、ウィルスの処分を進めるのだが……。
先日読んだ「着陸拒否」と同じく、生物兵器の恐怖を取り扱っていますが、こちらはアメリカ空軍の軍人たちが主人公ということもあって、既読の「着陸拒否」とも「"ファイナル・アプローチ":https://museum.projectmnh.com/2010/02/03171736.php」ともすこし趣が異なります。ただ、前半部分、C-141を強行着陸させるあたりのくだりは、飛行機好きにとっては垂涎でした。後半は、冒険活劇的な趣が強くなっています。構成や登場人物の動かし方はいろいろな意味でとても勉強になりました。
「着陸拒否」も、最終幕で一抹ながらも強い不安を覚える名残がありましたが、やっぱりこの本でも同じ。核兵器や生物化学兵器は冷戦終結以降もその恐怖から逃れることはできないことを痛感しました。誰かの誤りや感情などで、意図せずトリガーがひかれ、世界が壊滅的打撃を受ける可能性は常にあるのだ、ということが良くわかります。特に日本は非常に複雑な外交状況におかれていることもありましょうし。
まあ、普段生きていくうえでは、こうしたことを考えていては前に進めませんので、考えるのは、読書している間や、こういった文章の中だけにとどめておきましょう。
次は同じくナンスの「ブラック・アウト」という本を読み始めました。こちらもまた秀逸。通勤時間が楽しいです。
J・J・ナンス「スコーピオン1の急襲」