American Literature

今朝は四時半に目を覚ましました。あわててテレビをつけるのだが、メガネをかけていないので、点数がよく見えません。目を瞬いてとっくりとみると、あれれ、勝っているじゃないですか! 後半始まったばかり。まだわからないけれど、2点差。すごいなあ。
というわけで、少し早めの朝食をとりながら、日本の勝利を鑑賞しました。次はパラグアイですか。がんばって欲しい。

あなたに不利な証拠としてを読もう

で、先日から読んでいる「あなたに不利な証拠として」のことを。この本は、都心で売っているBig Issueの書評で紹介されていたもの。うちの奥さんが読んでみたら、と薦めてくれたので、早速入手してみたんですが、いやあ、すごいですわ。ここまでの強靭な粘りを持った小説家に出会ったのは久しぶりです。

著者横顔

著者はローリー・リン・ドラモンド。名前だけでは、一瞬、男性か女性かわからない。ローリーとくれば、ローリーですからね。でもミドルネームのリンは女性の名前であることに気づく。だが、この方の経歴がすごい。女性でありながら制服警官として5年間勤務し、30歳で交通事故にあって辞職し、ルイジアナ州立大学で英語の学士号とクリエイティブ・ライティングの修士号を取得した。現在は大学で教鞭をとりながら親筆活動を続けている。

構成と内容

この本、キャサリン、リズ、モナ、キャシー、サラという5人の女性をめぐるオムニバス形式の中短編。やっぱり、女性作家はすごい。ひれ伏すのみ。
たとえば、執拗なまでの完璧な描写を無限大に繰り出してくるし、難しいはずの「匂い」の描写を数ページにわたって粘り強く、執拗といってもいいかもしれないけれど、とにかく気迫に満ちた描写力に心を強く打たれました。
描かれているのは、女性警官たちをめぐる勤務の日常なのですが、われわれサラリーマンのように定型化された仕事などはなく、常に死と隣り合わせの世界。警察官の死亡率は交通事故が一番高いという意外な事実も。
緊迫感のある犯人との対峙シーンも読み応え抜群で、これは現役警官か、現役警官をきちんと取材した人でないとかけないだろう、と思わされてしまう。
一番心に残るのは冒頭のキャサリンだと思う。優秀な警官で、伝説の女性で、そして最後はやっぱり……。心打たれるものがある。

心の和む描写、そして開かれた謎

描写が凄い、と書きましたが、特に、ところどころに織り込まれる自然描写が美しくて、ラヴリー。私はアメリカに行ったことがないのですが、映画で見るアメリカの中流階級の住む住宅街の風情なんかが直接伝わってくる。たとえば、枯葉が風に吹かれて乾いた音を立てているシーンとか、葉の色が黄色になった広葉樹が重い枝を街路にたれていたり、リスが時折現れたり、とか。描写力は絶品で、これはもうなかなかまねできないと思う。かなり鍛練を積んだんだろうなあ。
それから、事態についての説明はあまりなされない。原因究明も。それは以前も言ったように謎のまま温存してある。だから、読者は、開かれた物語世界の真ん中に放り出されて、どこに行くのも自由。それを許す包容力がこの本にはあるのです。
緻密な描写、説明をしない奥ゆかしさ。
そうかあ、ここまで書かねばならんのかあ、とかなり勇気付けられた感じ。
だから本読みはやめられません。

女性作家万歳!

しかし、最近気づいたんですが、やっぱり女性作家さんの小説が好きかもしれない。まあ、いろいろ芸風はあるでしょうけれど。私が感銘を受けた女性作家といえば。。。
* 塩野七生
* 永井路子
* 篠田 節子
* 岡本かの子
* リンドグレーン
* アニタ・ブルックナー
* 澤田ふじ子
* ジュンパ・ラヒリ
加えて、辻邦生師の作品は女性的甘美さや緻密さを湛えているし、マルセル・プルーストだって、いろんな意味で女性的なものをもっていますので。そういうくくりでは辻邦生師もプルーストも女性的だといえるのでは、と勝手に思い込んでいます。