Opera

Richard Strauss: Capriccio / Sawallisch, Philharmonia Orchestra Richard Strauss: Capriccio / Sawallisch, Philharmonia Orchestra
Richard Strauss、 他 (2000/08/15)
Angel

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会社に向かう満員のバスの中で、思い立ってipodをスクロールして、サヴァリッシュ盤を聴き始めたのですが、冒頭の弦楽合奏でもう泣いてしまうのでした。昼休みにはクレロンと伯爵の朗読シーンと、フラマンが作曲するソネットに泣いてしまうのでした。ハープシコードの端正な和音と、それに寄り添うように弦楽合奏が絡んでくるあたりの優雅さといったら!カプリッチョはシュトラウス芸術の結晶化した花です。
もちろん、それは、ドレスデンで観たカプリッチョの記憶と間違いなくつながっていて、照明の落とされたザクセン州立歌劇場で、指揮のペーター・シュナイダーが、薄暗いオーケストラピットのなかで唯一天から差し込むスポットライトで浮きあがって見えていて、彼の指揮棒の動きにあわせて、弦楽部の一番前に座る首席奏者たちがおもむろに弓を動かし始める瞬間の緊張感と、静かに始まる弦楽合奏がもたらす絹糸に触れたような酩酊感が思い出されたからでした。
9月にNHK-BSで放送されていたカプリッチョも本当によかったです。
10月にドレスデンでカプリッチョを見ることに決めた数日後、NK-BSでカプリッチョを放映することを知ったのでした。まさにシンクロニシティの様相です。
この映像はウルフ・シルマーがパリで振ったバージョンで、ライブ録音なのだろうけれど、あとから映像をかなりいじっていて、すばらしく大胆な演出に仕立て上げていました。月光の音楽以降の伯爵夫人のモノローグが、幕中劇として扱われているのです!ルネ・フレミングが伯爵夫人を演じていたのですが、歌っているルネ・フレミングを客席からルネ・フレミングが観ているという構造。心躍る大胆さでした。「自分の演奏を客席からみてみたい」という欲求は音楽家の方なら一度は持つことがあると思うのですが、それを編集で具体化してしまったあたり、大胆でした。フレミング、よかったなぁ。賢明で誇り高く美しい伯爵夫人を見事に演じていたと思います。
しかし、本当にいい思い出だなあ、カプリッチョ。また見られるものならみたいオペラだなあ…。