また泣かされた──シュナイダー指揮の「ばらの騎士組曲」

  東京地方は寒い日ながら快晴で、気持ちの良い一日でした。最近つとにやることが多いのですが、そうしたタスクをこなせないまま、先週に引き続き今週もコンサートに行ってしまいました。今日はペーター・シュナイダー氏指揮の東京フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会を渋谷のオーチャードホールにて。

 オーチャードホールは、2007年の「ばら戦争」勃発時に、ウェルザー=メスト指揮のチューリヒ歌劇場の「ばらの騎士」を見て以来でした。
 
 周知の通り、シュナイダー氏も2007年の「ばら戦争」に参戦しておられました。2007年6月の新国立劇場公演で「ばらの騎士」を振っていらしたのです。あのときもやっぱりオケは東京フィルハーモニー交響楽団でした。
 
 その新国立劇場の「ばらの騎士」ですが、私は相当に感動して、全く涙が止まらなかったのです。第一幕の終盤の元帥夫人の歌声に涙、第二幕の「ばらの献呈」の場面で涙、そして、第三幕最終部の三重唱で涙。滂沱とあふれて、少々恥ずかしかったのですが。当時のブログは以下の通りの感じです。
 
 
 さて、今日の演奏会は、非常に短いものだったと言えましょう。前半はモーツァルト交響曲第41番、15分の休憩を挟んで、後半はシュトラウスの「ばらの騎士」組曲、おなじく「サロメ」から七つのヴェールの踊り、の三曲です。休憩もいれて90分ほどで終わってしまうこぢんまりとした演奏会です。
 
 ですが、今日も私は泣きました……。
 
 まずは、前半のモーツァルト。シュナイダー氏の指揮は、奇を衒うこともなく、端正に音楽を構築しています。上品かつ気品ある演奏。大仰に速度を動かしたり音量のコントロールを撮らずに、控えめでした。白眉だったのは第四楽章で、フーガの構築美が丁寧に描き出されていました。速度も中庸。淡々と仕事に没入している感じで、良心さえ感じます。ここでもやはり涙してしまいます。シュナイダー氏は、ウィーン少年合唱団のご出身。ウィーン的気品とでも申しましょうか。素晴らしかったです。
 
 15分の休憩のあとが、本日のハイライト。シュトラウスが編曲をした「ばらの騎士組曲」でした。モーツァルトより編成が大きくなり、オケも良く鳴っています。先のモーツァルトとは異なり、テンポを動かして、ためるところはためて、駆けるところはきちんと駆けるというダイナミックな演奏です。
 
 そして、やはり今日も「ばらの献呈」の場面で涙は滂沱と流れたわけです。歳をとったのでしょうか。涙もろくて困ります。演奏の方は、速度をかなり落としているのですが、きちんと統御されています。
 
 そして第三幕最終部、圧倒的な美しさと高揚。ゆったりとしたテンポで語られる元帥夫人の複雑な心境。ここでも涙が流れてとまらない。もう耐えられませんでした。2007年の新国立劇場の「ばらの騎士」と同じく怒濤の感動です。
 
 先に触れた、2007年の記事においては、、シュナイダー氏の指揮について積極的に触れていないのです。です。確かに、ニールントさんも、ツィトコーワさんも素晴らしかったし、ジョナサン・ミラー氏の演出も相当に素晴らしかった。ですが、あの感動を導いたのがシュナイダー氏であったことに今日改めて気づかされたのでした。
 「サロメ」の七つのヴェールの踊りももちろん素晴らしかったですよ。オケも気合いが入っていて、躍動感あふれる演奏でした。
 
 そんな感じで、日曜日の午後は実に幸福な時間でした。こういう感動に立ち会えただけで生きていて良かったなあ。と思います。