2012/2013シーズン,Benjamin Britten,NNTT:新国立劇場,Opera

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なんだか引っ張りまくっていますが、今日もピーター・グライムスについて。

ピーター・グライムスの子供時代

先日から、ピータ・グライムスはどういう境涯だったんでしょう、などと考えることしきりでした。

ピーター・グライムス、きっと親に暴行されながら育ったんだろうなあ。

自分はそうされたくないんだけれど、そうしか出来ないんでしょうね。育てられたようにしか育てられないのが普通です。

で、そうした自分が本当に許せない状態。自己分裂しているわけです。

ピーター・グライムスの夢

そうしたことをすべて解決するのが、漁をして金を稼ぎ、村人を見返す、という、ほとんど無理な夢である、というのもあまりにリアルで怖いです。

こういう人って結構居るんじゃないかな。

今居るところで、がんばって見返してやる、みたいな。

でも、体制的あるいはシステム的に無理なんだけど、みたいな。パースペクティブを変えなければ実現しないのだが、パースペクティブを変えられない、あるいは変えられるという視点を持っていない、という状態なんでしょう。

家への憧憬

あとは、「家」に対する憧憬が端々でみられました。

おそらくは不幸な子供時代で両親から十分に愛されることはなかったはず。だから、自分の本当の両親が別のところにいるはずで、その「家」を常に追い求めているはずです。決して辿り着くことの出来ない「家」を探し求めるわけです。

女性の最も偉大なことは、女性の存在は「家」となることです。ピーター・グライムスにとっては、エレンとの結婚が大きな目標ですが、それは「家」を探し求める過程にあるはずです。

たどり着けない目的地

しかし、きっと、エレンと結婚しても、破局は免れないでしょう。ピーターの理想は高すぎる。現実を受容することが出来ないほど。

そうした理想を徒弟にも求めるから、乱暴するわけですね。。

必死に生きているんですが、生きれば生きるほど空回りして、周りから浮き上がっていくような感じです。

 

結局、今週末も仕事になりました。また行きたいのですが、無理ですかね。。忙しすぎですが、「海猿」の対策本部のような仕事状況になっています。

 

それでは、フォースとともにあらんことを。

2012/2013シーズン,Benjamin Britten,NNTT:新国立劇場,Opera

明日も新国立劇場で公演がありますね。

14時からですので、会社勤めの方には辛いですが、かえってすいているかもしれません。

 

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今日も、新国立劇場「ピーター・グライムス」の凄かった演出の一部を書き留めておきたいと思います。

 

第三幕の最終部分。

ここで、エレンがみせる仕草が凄かった、という話。

 

村人達が教会の座席のように並んだ椅子に座っていて、全員が紙を顔の前に掲げて、前を向いて歌を歌っているわけです。

これが先日書いた通り、「群生相」のもと行動しているという証です。

ピーター・グライムスの船が沈んでいく知らせを、皆が知らん振りをしています。

 

心を痛めているのはエレンだけ。

 

でも、村人達の白い目に耐えかねるようにエレンも最後には座席について、他の村人と同じく紙で顔の前に掲げるところで、ちょうど幕が下りるという演出でした。

 

エレンも、最後にはやはり、ピーターを死に追いやった村人達の中に戻っていかなければならなかったわけです。生きるために。

エレンの心の中が見通せるような気がして、心臓をわしづかみされてしまいました。

悔しさとか無力感とか虚しさとか、そういう気分が入り交じった複雑な心境なんだろうなあ。

あるいは、エレンもピーターを愛していたはずで、大きな喪失感があったはず。それからピーターを裏切っているという背徳の感情もあったのでしょう。

 

あれは、我々社会に生きる人間が、生きるためにやっていることなんだよなあ、なんて思ったりしました。

一番観ていて辛くて、印象深い場面でした。

2012/2013シーズン,NNTT:新国立劇場,Opera

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私の愛する新国立劇場。片思いですけれど。建築的にも大好きです。

昨日に続き、ピーター・グライムスが感動的だった件の第二回目です。

デッカーの演出について

非常にシンプルな舞台構成でした。八百屋舞台になっていて、遠近感のあるボックス構造の舞台装置を使って、テーブルや椅子を配置することで、酒場、教会、ピーターの部屋を作り出していまにテーブルや椅子を出して舞台を作っていく格好でした。

舞台装置としては新鮮さはあまりありませんでしたが、物語と音楽との緊密さは抜群で、効果的な様々な所作や仕掛けが素晴らしかったと思います。

演出の話とストーリーの話が混ざりますが、考えたことをいくつか書いてみます。

集団の動物的で残忍な性質

この物語のテーマは、集団の残忍であまりに動物的な性質と、個の対立と言って良いと思います。それは相当に古く根深いものでしょう。

トノサマバッタは、普通は緑色をしていますが、大量発生をすると茶色に変色し、その能力も変化します。これを「群生相」と言い、肉食性が強まり、気が荒く攻撃的になります。

どうやら人間も同じようです。

一人一人は善人でも、寄り集まると、残酷になって異質なものを追い出そうとするわけです。

これは、生物であればいずれも同じです。あるいは、生物の細胞レベルでやっていることと同じ。

だとすれば、これは動物的であって人間的ではないのかも。

人間性の本質が理性にあるとすれば、の話です。

こうした、集団がもつ動物性は、今回の演出の随所に現れていた気がします。

証拠がなく、思い込みから、ピーター・グライムスを糾弾し、裁判で無罪となりながらも、ピーター・グライムスが殺人を犯したと思い、証拠なく糾弾を始めたり、集団の中に入りきれないエレンをにらみつけたり。。

あるいは、酒場の騒ぎでは、人々は鶏や豚などの動物の仮面をかぶっているシーンも。すこしありがちですが、効果的でした。

いつもは真っ黒な洋服を着ている村の女性達が、真っ赤なドレスに着替えてダンスに興じるという趣向でした。

日頃は抑圧している自らの野生の欲望は、赦されれば集団の中において奔放に解放されるということなのでしょう。

一人一人は「弱い」けれど、集団になると強く残忍です。デモの破壊行為や、戦争の残酷さがそれを物語っている気がします。

 

さて、もう少し書きたいことがあるのです。下書きはあるのでまた明日。

 

今日も、サー・コリン・デイヴィス盤を聞き返しているんですが、感動がよみがえってきます。ここだけの話、ブリテン自身の盤より好きかもしれません。。

ではまた明日。

2012/2013シーズン,NNTT:新国立劇場,Opera

初台の新国立劇場で、ブリテンのオペラ「ピーター・グライムス」観てきました。
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これまでになく感動して、しばらく涙がとまらないぐらいでした。
これは、なかなかない機会。本当によい体験で、人生変わったぐらい衝撃的でした。
まずは歌手の方々を中心に。
席は最前列でした。指揮のアームストロングが低い声で唸りながら指揮をする姿を直ぐ側で眺められるという贅沢な位置でした。歌手の声が直接伝わってきて直接心臓が響く感じでした。ただ、オケの音が意外と聞こえないのがちょっと残念。オケが見えないのも残念。
ピーター・グライムスを歌ったのはスチュアート・スケルトンでした。不器用で傷つきやすく、神経質で病的なピーターを演じきっていました。
第三幕二場のピーター・グライムスのモノローグのところが圧巻でした。
「ピーター・グライムス!」と歌う合唱が舞台裏から聞こえるんですが、ピーターの幻聴に他ならないわけで、それに苦しみ身もだえながら、独白するところは、本当に圧巻で、あれはもう私の中では最高レベルの体験でした。
本当に涙がとまらんですよ。。
エレンを歌ったスーザン・グリットンもよかったですよ。
当然ながら完璧な歌唱で、ピーターに同情しながらもピーターを救えない無力感にさいなまれ、最後には集団にやむなく従ってしまうエレンの心境を見事に演じていました。最後の幕切れのシーンについては次回書きますが、滂沱でした。
バルストロードを歌ったジョナサン・サマーズ。私はこういう役柄の方が大好きです。
こういう方が安定感をもってアンサンブルを支えてるからこそ、全体が引き締まるわけです。あとは、こればかりは欧州文化圏出身者ならではとなる軽妙な挙措がいいのですよ。第一幕の最後の酒場で、皆が輪唱を始めるところ、あそこの歌い出しと軽妙な演技がすばらしく、なぜかあんなシーンなのに深く感動してしまいました。
あとは、望月さんです。この方も最近新国の常連になりつつある感があります。巧くてカッコイイのですよね。絶対に外さない安定感が素晴らしいです。
あとは合唱が今回も素晴らしかったです。たしか、「さまよえるオランダ人」あたりから、合唱が格段になってきた記憶があります。今回も予想に違わず素晴らしかったです。

個人的な件

昨日の夕方から今朝まで色々あって、仕事でした。もう、ほとんど、行けないんじゃないか、とあきらめていたんですが、今朝、三時間ほど仮眠して、気合いで初台に行ったわけです。挫けなくて本当によかったです。この体験を逃すのは人生の一大事でした。
もちろんしっかりレッドブルでドーピングしました。
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続きます。明日も。
※ 公演は11日と14日にもありますよ。是非!

Opera

10月前半は、劇、バレエですが、後半はがっつりオペラです。

http://www.nhk.or.jp/bs/premium/

 

10月22日(21日深夜)

  • 二期会公演「カバレリア・ルスティカーナ」、「道化師」
  • ショパン生誕200年ガラ・コンサート ダニエル・バレンボイム ピアノリサイタル

10月29日(28日深夜)

  • 藤原歌劇団公演「夢遊病の女」
  • マーラー没後100年記念演奏会 アバド&ベルリンフィル「大地の歌」、交響曲第10番から

久々の雨で涼しい一日。寒くなれば暑さが恋しい。暑くなれば寒さが恋しい。身勝手なもんです。

では。

Chorus

昨日からブリテンを聴いたりパルジファルを見たりと音楽が楽しい季節になりました。
やはり、私の帰るべきところはここでになるのでしょう。

戦争レクイエムを、作曲者自身の指揮によるあの有名な盤を聴きました。

ピーター・ピアーズもいいですし、フィッシャー=ディースカウがなによりいけてます。オーウェンの英語の詩とラテン語の典礼文の融合も素敵です。

ありがちかもしれんのですが、少年合唱に歌わせるとこれはもう、いわゆる天使の歌声的な趣です。

久々に聴いて、やっぱりカッコいいわー、と感動しました。昨日書いたように内容は重いのですが。

ピーターグライムスのほうも粛々と進捗中。しばらくはこれしか聴けないなあ。

Chorus

はじめに

写真を。東京湾から撮った写真です。いい季節です。もっと涼しければなおさら。

もっとレタッチの練習をしないと。まだ改善できるはず。

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近況関連

このところ仕事が「充実」しまくっていて、ありがたいことです。スリリングな毎日です。しばらくは引き続き充実の予定。

「パルジファル」に行く手を遮られてしまった感があり、すこし留守にしました。

ほんとうは、今週末に二期会の「パルジファル」を見に行くつもりだったんですが、時間的に無理があり断念しました。無念。

 

戦争レクイエム

それにしても、シンクロニシティだな。。

新国立劇場「ピーター・グライムス」の予習にと資料を物色しているところで、ブリテンの戦争レクイエムの放送があったとは。昨夜深夜のプレミアムシアターで、アンドリス・ネルソンスの指揮にて。録画完了し、今晩から少しずつ見ないと。

バーミンガム市響をアンドリス・ネルソンスが振った映像で、今年の5月30日収録の新しい演奏のようです。

アブラハムのイサク献供の話

戦争レクイエムで私が最も恐ろしく思うのが、この部分です。

旧約聖書の中に、アブラハムが自分の息子であるイサクを生け贄に捧げる場面があります。

神から命じられたので、仕方が無くアブラハムはイサクを生け贄に捧げるべく殺そうとする瞬間に、神がそれをとめるという話です。

大学の先輩によれば、この挿話は、人体実験や臨床試験の倫理学的問題につながる問題なのだそうです。

神の命令に従ってまで自分の子供を殺すという自虐行為がどこまで赦されるのか。真理の探究のために人間を犠牲にすることがどこまで赦されるのか。

あるいは、国の大儀のため戦争に子供達を送り出すことは赦されるのか。

 

我が子を屠るアブラハム

この「戦争レクイエム」においては、この物語の派生であるウィルフレッド・オーウェンの反戦詩がオッフェルトリウムの歌詞として採用されています。

この中で、最後に神によって助けられるはずのイサクが死に至るという強烈な結末が歌われています。

 

「その少年に手をかけてはならない。見よ! 角を一匹の雄羊を。彼の代わりにこの高慢な雄羊を捧げよ!」

しかし、アブラハムはそれに従わない。そうではなく、彼は息子を我が手で屠ったのである。

 

強烈すぎる。

 

こうやって、人々は我が子を戦争に送るのか、という絶望感です。

きな臭い世の中においては、「神」といった必然の命に従わなければならない理由があると言うことでしょう。それはすなわち、我が子を屠るということまで想定しなければならないわけで、そこまでの覚悟を持って世界を生きなければならないと言うことなのでしょう。そんなことを思います。そこまで覚悟出来ているのか。

この解釈、先輩と話していたときはそこまで気づかなかったんですが、昨今のニュースを見たり、今回改めて考えたりしてようやく解釈がまとまった気がします。

 

明日から仕事ですが、最近三連休が辛いです。休みは二連休が限界。これ以上休むとリズムが狂います。

飛び石希望でお願いします。

未分類

久々更新。スタバにて「お仕事」。クライバーの運命も久々。リバーヴ感がたまらないです。つうか、私、ベートーヴェンを本当に聞かない人だ。反省。

Jazz,Music

昨週に引き続き角松な日曜の夜です。

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中川英二郎と本田雅人のバトルが見られるなんて幸せですよ。。

あとはですね、中村キタロー氏のベースがいいっす。

http://mambaboo.org/Pkitaro.html

ベースもドラムもツーメン体制で、曲によって入れ替わるんですが、中村氏が入ると、途端にサウンドが引き締まり、グルーヴが、そうですね、誤解を恐れずに言うと、バーバリズム的躍動感を持って立ち上がってきます。

この方、杏里や久保田利伸のバックで弾いていたこともある方。

ACT1が終わるところで、角松が「ここまでは前座です」と言ってステージを去っていくんですが、確かにACT2も充実しすぎてる。

バンドのメンバー、顔しかめて演奏しているんですが、みんな楽しんでます。羨ましいです。

夏の終わりに本当に楽しめました。M先輩、ありがとうございます。

 

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それでは、フォースとともにあらんことを。

※ パルジファル、お忘れ無きよう。私は予約済みです。

Richard Wagner

いよいよ今晩放送です。

http://www.nhk.or.jp/bs/premium/

 

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<追伸>

ついでに、これはBILD誌の画像。メルケル首相は、4年前と同じドレスでバロイトに来たらしいです。カミさんに聴いていたんですが、たまたま画像を見つけましたのでご紹介。

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