映像は単純にオペラ公演を録画したものではありません。いろいろ趣向の凝らされた編集で、実に楽しいのです。録音舞台はおそらくはガルニエ宮ですかね? でもこの大きさはバスティーユかも?
私はバスティーユオペラには行ったことがあるけれど、ガルニエ宮のほうは、入口近くの売店でオペラグラスを買っただけで、中には入っていない。ああ、2002年にパリに行ったとき、無理してでも「チェネレントラ」を見ておくんだった。ガルニエ宮は「失われた時を求めて」にも登場しますし。あー、パリ行きてー。プルースト読まないと。。。
で、この演出、すごくて、オペラにメタ・オペラがかぶるんですよ。この作品の意味的白眉は、伯爵が、「俺たちのオペラ談義自体をオペラにしちまおうぜ」という最終部にあるんです。それはオリジナルのリブレットにある内容です。
昔、哲学科に入学したとき、新入生合宿みたいなものがあって、6人ぐらいのグループに別れて、それぞれ寸劇をやらないといけない、という決まりになっていました。僕たちのグループについて頂いたのは、ギリシャ哲学を専門にしておられた凄くやり手の教授と、3年生の先輩のお二人でした。それで、どんな寸劇をやるか、アーダコーダとうなっていたんですが、教授がこうおっしゃったんですよ。
「そうだ、この寸劇を考えている場面自体を劇にしちゃおう!」
って。
先輩は「すごい! メタをかけるんですね!」っておっしゃった。メタ、って形而上学というか方法論というか、一個上というか、まあそんな感じ。メタフィジークは形而上学ですので。それで、僕らは、「どんな寸劇をやろうか」とみんなでアイディアを出し合って、最後に助教授が「そうだ、このプロセスを劇にしよう!」という台詞で終わる劇を作り終えたのでした。あんまり受けなかったけど……。
「カプリッチョ」での伯爵のアイディアは、あの教授のアイディアと一緒。これって、ギリシア悲劇的なのかしら。シュトラウスはギリシャ悲劇に造詣が深くて、どうやらそれはギムナジウムの頃からのことだったそうですし、「ナクソス島のアリアドネ」とか、「ダフネ」、「ダナエの愛」なんていうギリシア神話に基づいたオペラを書いていたりしますし。もちろん、この「カプリッチョ」にもギリシア神話のエピソードがちりばめられています。
で、話を戻すと、普通の演出だと、そのまま最終部に突入するんですが、この演出だと、プロンプターのトープ氏(モグラという意味です)がプロンプターボックスから現れるところから、なんだか様子がおかしくなる。あれ、僕たちの観ているオペラって、オペラの中のオペラなの? みたいな。これって「ナクソス島のアリアドネ」とも似ている。
それで、月光の音楽から最終部に至るまでは、伯爵夫人と執事だけが、舞台に登場する。もちろん伯爵夫人はフレミング。でもですね、その舞台を伯爵夫人フレミングがバルコニー席から見ているんですよ。フ伯爵、フラマンもオリヴィエもラ・ローシュも、バルコニー席からオペラグラスで舞台上の伯爵夫人マドレーヌを見ている格好なんです。合成映像なんですよ。
これで、月光の音楽以降が、オペラ内オペラとしてハンドリングされるという仕掛けです。
以下の写真がその場面。舞台上には伯爵夫人を演じるフレミング。そして、右上のバルコニーにいるのも伯爵夫人のフレミング。秀逸だ。
これを初めて見たとき、本当にやられた! と思いました。ロバート・カーセンの演出は素晴らしい。
シルマー&フレミングの「カプリッチョ」のメタな構造
短信:ペーター・シュナイダーの予定!
ちょっと待ってください!!
バイロイトに出演しないペーター・シュナイダーの今後の予定。すごく気になっていたので、Operabaseで調べたら、以下のような感じですよ。。
“Operabase":http://www.operabase.com/
“http://www.operabase.com/listart.cgi?name=peter+schneider&loose=E&acts=+Schedule+":http://www.operabase.com/listart.cgi?name=peter+schneider&loose=E&acts=+Schedule+
* Sep-Oct 10 Der fliegende Hollander Conductor Paris(Opera)
* Jul 10 Der Rosenkavalier Conductor Zurich(Oper)
* Jun-Jul 10 Der Freischutz Conductor Zurich(Oper)
* Jun 10 Capriccio Conductor Wien(SO)
* Apr 10 Fidelio Conductor Dresden(SSO)
* Apr-Jun 10 Parsifal Conductor Wien(SO)
* Mar-May 10 Le nozze di Figaro Conductor Hamburg(SO)
* Feb-May 10 Der Rosenkavalier Conductor Wien(SO)
7月にチューリヒで「ばらの騎士」振るんですね。6月はウィーンで「カプリッチョ」。やばい。行きたくて仕方ない。
ウィーンの「カプリッチョ」、伯爵夫人はルネ・フレミングですよ!
“http://www.operabase.com/diary.cgi?lang=en&code=wawis&date=20100615":http://www.operabase.com/diary.cgi?lang=en&code=wawis&date=20100615
そして、チューリヒの「ばらの騎士」のマルシャリンもルネ・フレミング!!!
“http://www.operabase.com/diary.cgi?lang=en&code=wszuo&date=20100707":http://www.operabase.com/diary.cgi?lang=en&code=wszuo&date=20100707
ギャー! 卒倒します。
続々 新国立劇場関連の事業仕分についての続報
いろいろ疑問に思いましたので、引き続き調べています。っつうか、「神々のたそがれ」の予習もしないといかんのですが。
文部科学省のウェブサイトの引用
まずは、文部科学省の引用から。
<文化・芸術分野>
文化芸術は、過去から未来へと受け継ぎ、人々に喜びや感動を与えると同時に、経済や国際協調をはじめ我々の全ての営みの基盤として重要であると考えています。
優れた劇場や芸術文化活動への支援や地域の伝統文化の継承、メディア芸術の振興など、「ハード」整備から「ソフト」「ヒューマン」への支援に重点を置くことにより、文化・芸術関係予算について、過去最高の1,020億円を確保いたしました。
ただ、これが、新国に直接関連するかはよくわからないけれど、なんともまあ玉虫色というか、なんというか、複雑な感想です。こんなトーンの報告書を会社で書いたら、袋だたきだなあ。
二回目の事業仕分け
ご存じの通り、二回目の事業仕分けが行われます。参議院議員選挙をにらんだ支持率向上策の一環というのも周知の通り。
“http://www.cao.go.jp/sasshin/kaigi/honkaigi/d6/pdf/ss2.pdf":http://www.cao.go.jp/sasshin/kaigi/honkaigi/d6/pdf/ss2.pdf
こちらは独立行政法人がスケープゴートとなります。新国立劇場が属する「日本芸術文化振興会(“==>":http://www.ntj.jac.go.jp/)」は当然独立行政法人です。下記のリンクの右下にあります。
“http://www.bunka.go.jp/bunka_gyousei/sosiki/index.html":http://www.bunka.go.jp/bunka_gyousei/sosiki/index.html
で、二回目のトーンは結構厳しめです。
“http://www.cao.go.jp/sasshin/kaigi/honkaigi/d6/pdf/s1-1.pdf":http://www.cao.go.jp/sasshin/kaigi/honkaigi/d6/pdf/s1-1.pdf
引用しますと、
行政からの支出を受け、あるいは権限を付与される等によって独立行政法人及び政府系の公益法人が行う事業については、昨年11 月に実施した事業仕分けにおいて様々な問題が指摘されたところである。これらについては、本来法人が有する専門性、機動性等のメリットを活かしきれずに、非効率・不要な事業の温存等の問題が発生しているおそれが大きい。こうした観点から、今回の事業仕分けでは、このような独立行政法人及び政府系の公益法人が行う事業を取り上げ、予算面にとどまらず、事業の必要性、有効性、効率性、緊要性や、誰が(国、地方公共団体、独立行政法人、公益法人、民間事業者等)事業を実施する主体として適当かといったことについて検証を行う。
というわけで、結構なトーンです。まあ、政治文書ですので、シュプレヒコール的な意味合いもあるでしょう。とはいえ、改めて何らかの動きが出てくるはずです。いったんは平成23年度予算を見据えたものらしいので、まずは注視を続けましょう、というところですかね。
新国立劇場への国費投入実態
前回の記事( “https://museum.projectmnh.com/2009/11/22003546.php":https://museum.projectmnh.com/2009/11/22003546.php )において、以下の記載をしましたが、参照していたリンク先が消えていて、再度確認をとることができません。
新国の総予算は79億円。そのうち国からの予算は48億円。
どういう風なお金の入り方なのか、以下の図が参考になりそうです。
図A
で、あらためて、二一年度の収支予算を確認してみました。
“http://www.nntt.jac.go.jp/about/foundation/pdf/zaimu_yosan.pdf":http://www.nntt.jac.go.jp/about/foundation/pdf/zaimu_yosan.pdf
私も収入部分のうち特別会計をエクセルで検証しました。一般会計は、寄付金などに限られるようですので。
図B → *最新の資料と差し替えます。以下の図は最新ではありません。*
-図Aでみられるように、日本芸術文化振興会と新国立劇場運営財団の間には「業務委託契約」が結ばれている模様でして、黄色に塗った部分が国費投入部分と思われます。ということは、私が、以前48億円という数字を出した根拠は、平成20年度に当たると思われます。平成21年度は9億2000万円ほどマイナスなんですね。-
正しい記事を後ほど書きます。私が基にした資料が霧散してしまいました。最新はこれから記載します(2010/6/6)
まとめ
2002年以来、新国立劇場にはお世話になっていますし、最近の意欲的なパフォーマンスや、質的向上が見られる新国立劇場にはこれからも是非頑張ってほしいです。ただ、国家財政の危機的状況も理解していますので、そのあたりの兼ね合いが難しい。以前も書いたように、欧米のオペラハウスだって、厳しい中で何とかやりくりしています。新国立劇場も、是非にも自力で回せるぐらいに頑張ってほしいです。公演の質の向上もありましょうし、ネット配信や、公演映像の商品化などなど、アイディアはあっても良いのかなと思います。あってはほしくないことですが、新国立劇場運営財団が官僚の天下り先としての存在としか見なされなくなれば、自ずと消滅の危機に瀕すると思いますので。
以下の二つがポイントでしょうか。
* パフォーマンスの質の向上
* チャネル拡大
以上長くなりましたが、以上と言うことで。いろいろ勉強になりました。仕事でなれた作業なので、意外と楽しかったです。
明日こそは、ドレスデン奇想変奏シリーズに取りかかりたいと思います。っつうか、ローマ紀行も終わってないことに気づいた。まだまだ書くべきネタはたくさんあるなあ。
(続)新国立劇場関連の事業仕分についての続報
今朝の記事、少々早起きしていて、少々ミスりました。新国は文化庁隷下ではないのですね。
というわけで、初心に立ち戻って、文部科学省の以下のリンク先をご覧ください。
平成22年度文部科学省予算(案)のポイント
“http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2010/03/09/1288506_":http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2010/03/09/1288506_4_1.pdf
文化・芸術予算全体でみると、
* 平成21年度予算:1015億円
* 平成22年度予算案:1020億円
* 増減率:-0.5%*
とのこと。なんだ。この概算要求だと、今と変わらない。事業仕分けの意味がわからない(個人的には、事業仕分けについては、支持でもなく不支持でもありませんが)。
でも、1020億円がはした金に見えてきますよねえ。国債が数十兆円だというのにくらべれば。これぐらい、いいやんけ、みたいな。事業仕分けでやるべきはもっと別のところではないかなあ。。。
もう少し調べます。
新国立劇場関連の事業仕分についての続報
かなり遅い反応なんですが、ずっと気になっていましたので、現状を調べてみました。もちろん予算審議があるので、どう転ぶのかはこれからなんですが。
昨年の11月に以下の記事を書いておりますので、こちらもご覧ください。
“https://museum.projectmnh.com/2009/11/22003546.php":https://museum.projectmnh.com/2009/11/22003546.php
それで、文部科学省の事業仕分けに対する見解は以下のページで見ることができます。
“http://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/h22/1288550.htm":http://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/h22/1288550.htm
少々官僚的な言い回しで、なにを言っているのかわからないところもあるのですが、こういうことが書いてあります。引用します。
2.文化関係事業
「芸術創造・地域文化振興事業」や「子どものための優れた舞台芸術体験事業」など文化関係の事業に関する事業仕分けの結果(予算縮減や国の事業として行わない)に対して、これらの事業が実施できなくなるとの心配の声が多く寄せられました。これらの事業については統合や重点化による効率化を図りますが、新たに、優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業や地域の伝統文化の継承のための事業を創設することとし、文化芸術活動に対する支援については従来以上に充実して参ります。
国会答弁のようでちょっとよくわからないです。
で、こちらの資料。
「事業仕分け結果・国民から寄せられた意見と平成22年度予算(案)における対応状況・詳細」
“http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2010/01/14/1289014_1_2.pdf":http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2010/01/14/1289014_1_2.pdf
34ページに結果が書いてあるのですが、11万件の意見があったそうで、まあ、事業仕分けには反対の意見が多かったようです。当たり前ですけれど。気になるのが「優れた芸術活動への重点的支援については3年で2分の1まで縮減する」という表記。なるほど。
(追記)
以下から先は、私の勇み足。日本芸術文化振興財団は文化庁配下ではなく文部科学省配下でした。金額が合わないからおかしいと思いました。続報は次の記事にて。大変失礼しました。
----
で、文化庁のウェブサイトに行ってみましょう。
“http://www.bunka.go.jp/bunka_gyousei/sosiki/index.html":http://www.bunka.go.jp/bunka_gyousei/sosiki/index.html
上のリンクの右側最下段の「日本芸術文化振興会」配下に新国立劇場がぶら下がっているはず。なので、文化庁の二二年度予算案を観てみればいいわけです。で次のページ。
“http://www.bunka.go.jp/bunka_gyousei/yosan/index.html":http://www.bunka.go.jp/bunka_gyousei/yosan/index.html
まず最上段の「平成22年度文化庁予算(案)の概要」を開いてみると、
“http://www.bunka.go.jp/bunka_gyousei/yosan/pdf/22_gaisan_gaiyou.pdf":http://www.bunka.go.jp/bunka_gyousei/yosan/pdf/22_gaisan_gaiyou.pdf
全体で、前年比0.5%の伸びとなっていて、「文化芸術創造活動への重点支援」の項目は、6億1600万円の減額となっている。おそらく、ここが、「日本芸術文化振興会」の予算にマッチしているはず。
それで、つぎに「平成22年度予算(案)主要事項説明資料」を開いてみる。
“http://www.bunka.go.jp/bunka_gyousei/yosan/pdf/22_gaisanyoukyu.pdf":http://www.bunka.go.jp/bunka_gyousei/yosan/pdf/22_gaisanyoukyu.pdf
再び引用。
(1)優れた芸術活動への重点的支援4,598百万円( 5,017百万円)
我が国の芸術水準向上の直接的な牽引力となる芸術水準の高い、音楽、舞踊、演劇、伝統芸能、大衆芸能の各分野の公演や、優れた劇映画、記録映画の製作に対し支援するとともに、我が国のトップレベルの芸術団体と国内各地の劇場が共同で制作するオペラ等の舞台芸術公演に対して重点的に支援を行う。
①舞台芸術等支援3,886百万円( 4,306百万円)
支援対象:オーケストラの定期公演など基幹的活動や、意欲的な優れた芸術活動への重点的支援 338件
トップレベルの芸術団体と国内各地の劇場が共同で制作する舞台への支援
・舞台芸術共同制作公演(新規) 6事業②映画製作支援712百万円( 712百万円)
支援対象:2分野(劇映画、記録映画)、60作品①が日本芸術文化振興会の予算のはずで、4億2000万円の減額。新国に投じられている予算は48億円なので、あまりインパクトはなさそうに見えてしまう。しかし、舞台芸術支援費は38億円。あれ、足らない。。前回の記事の「四八億円」の記載のPDFはネットワークから消えていて、よくわからない。うーむ。
それにしても、先にも触れたように、「3年で2分の1」という表現が非常に気になります。短期的には、契約関係などがあるから、大きな変動はないのかもしれませんが、中長期的には予断を許さないです。
それから、来年度についてもまだよくわからない。あくまで当局の要求なので、国会でどうなるか、というところ、最近のニュースは、小沢氏の問題や、新党結成の問題ばかりで、予算審議がどうなっているのかよくわからんのですが、もうしばらく様子を見てみることにしましょう。
月光の音楽の秘密は??
さて、今朝の通勤電車は、シルマー&フレミングの「カプリッチョ」の映像をば。うーむ、また泣いてしまった。で、何でこんなに感動するのか、いろいろ考えてみました。
その秘密はのひとつとしては、おそらくはこの激しい転調にあるのではないか、と。「月光の音楽」の後半部分のところ、弦楽器のフレーズが(おそらく)短三度でどんどん転調上昇していくんですが、ある瞬間でその転調が止まり、そこで、もどかしさを覚え、最後に一挙に開放されたように、さらに和声解決するんです。この開放感に絶えられない。こらえていたものが一気に開放されて、涙腺が緩むという寸法、でしょうか。ちょっと考えないと。ほかにも謎や仕掛けがたくさん隠されているはずなんだが。いい加減ユーロがあがらんうちにスコア買わないと。
昼休みはベーム盤「カプリッチョ」で、ヤノヴィッツの伯爵夫人を楽しみました。この録音も本当にすごいよなあ。先日も書きましたが、ミュンヘンのゾフィーエンザールというところでの録音でして、ハイティンクの「リング」録音と同じ場所です。オケはバイエルン放送管弦楽団。これもハイティンクの「リング」と同じ。ヤノヴィッツ、あまりに清らかで罪のない声で、天使様です。
ではちょっとフレミングDVDの映像をすこしばかり。詳しくは後日。
この方、どなたかわかりますか?
明日は、ドレスデン奇想変奏の第二回の予定です。
ドレスデンの記憶の奇想変奏──「カプリッチョ」によせて その1
昨日も今日も実に良い天気です。近所の早咲きの桜は、もう満開に近い状態です。あと二週間で4月ですね。近所の学校は今日が卒業式でして、スーツやら袴を着込んだ学生達が街に溢れています。
今日からはしばらく「カプリッチョ」とドレスデンのことを書いていこうと思います。というのも、昨日のフレミングのアルバムの「カプリッチョ」に触発されて、NHK-BSで録画したフレミングの「カプリッチョ」映像をiPodに取り込んだから。今日一日で書き終わる予定でしたが、あまりにもむくむくといろんなものがわき上がってきて止めどがないのです。このオペラ、凄く思い出深いのですよ。
っていうか、来週は新国で「神々のたそがれ」なんで、そっちも考えないといけないんですけど。まあ、とりあえず続けましょう。
「カプリッチョ」を初めて聴いたのは、2006年だったと思います。それまで知らなかったのはお恥ずかしい限り。サヴァリッシュ盤をタワレコ新宿店で買いました。伯爵夫人マドレーヌはシュヴァルツコップ。若き日のフィッシャー=ディースカウやニコライ・ゲッダ、ハンス・ホッター、クリスタ・ルートヴィヒも参加しているEMIの歴史的名演です。ただし、モノラル録音ですけれど。
この曲、最初はよく分からなかった。今なら大泣きしてしまう「月光の音楽」だって、まだよく理解できず、ただただホルンの美しい旋律に心が反応しただけ。
それで、ネットで「シュトラウス&カプリッチョ」と検索してみると、旅行会社のウェブページにたどり着きました。なんでも、ドレスデンでの上演を見るツアーがあるとのこと。なんとまあ。それで、突然ドレスデンに行こうと思い立ちました。
奥さんはたまっていたマイルで行くことにしていたのですが、僕の仕事とあいているフライトの日程が合わなかった。それで、一日早く奥さんだけドレスデン入りしたんですね。
僕は翌日のルフトハンザでミュンヘン経由でドレスデンに向かいました。隣に座った方は僕より少し若い男性で、ドイツ語が堪能な方。コットブスに行くんだ、とおっしゃっていました。ミュンヘンまではエアバスA340にて。長さ的にはA340-300型と思われます。
ミュンヘンでの待ち時間は2時間ほど。で、空港のバーで(医者に禁止されてたけれど)ビール飲んで本を読んでいたんですが、なかなか時間にならない。
いつ見ても18時10分。ちなみにボーディングは18時55分。まだまだ時間あるや、と思っていたんですが、ふと気付いたら、時計が止まっていたんです。。。祖父の形見のロードマーヴェルだったんですが、ねじを巻き忘れていたんですね.
慌てて、Palmの時計を見ると18時55分。危なかった。それで、真っ暗なエプロンに降りて、ドレスデンと書かれたバスに乗せられオープンエプロンへ。4発のイギリス製コミュータージェットのBAe146アヴロRJに乗り込みました。
機体は、ミュンヘンからほとんど変針せずにドレスデンへ一直線へ飛んだのだと思います。おそらくはチェコ領空を通過したはず。シェンゲン条約というか、EU加盟国だからなのか。ジェットルートを調べてみると、やっぱりチェコ領内をかすっているみたい。
(なんで、こんな画像、僕が持ってるんですかねえ。秘密です)
まあ国内線とはいえ国境は関係ないんだなあ、と思った次第。
で、ドレスデンに到着。
なんだか、ドレスデン旅行記になってきました。それはそれでいいか。
それではまた明日。
カプリッチョについては、こちらも。
“https://museum.projectmnh.com/2009/10/19214851.php":https://museum.projectmnh.com/2009/10/19214851.php
西田敏行化計画その4 フレミングのシュトラウス
わたしは、もうだめっすよ。
今週は「ばらの騎士」聴いて泣きっぱなし。何でこんなことになっちゃったんでしょう。西田敏行化計画は完全に成功しています。
奥さん曰く、「疲れてるんじゃない」。
まあ、この数ヶ月、仕事でいろいろあったし、決算&人事異動を控えて、これからが佳境なのでもいろいろありそうだし。
ともかく、昨日引用した自分のこの記事読みながら、フレミング&ボニー&グラハムの三重唱聴いていたら、あのときのことを思い出して、滂沱。
今朝も、今も。
いかんいかん。
というわけで、写真また載せちゃいます。これは、新国の2010/2011シーズンの案内パンフの表紙です。ここにもニールント様とツィトコーワ様の麗しきお姿が(宣伝しているわけではありませんけれど)。
さて、フレミングの「シュトラウス・ヒロイン」というアルバムには、「ばらの騎士」、「アラベラ」、「カプリッチョ」のそれぞれの主役ソプラノの聴かせどころが収録されています。
1. 「ばらの騎士」第一幕最終部分。
2. 「ばらの騎士」第三幕最終部分
3. 「アラベラ」最終部分
4. 「カプリッチョ」「月光の音楽」以降「ソネット」含め最終部まで
「ばらの騎士」では、フレミングは当然マルシャリンを歌いますが、オクタヴィアンはスーザン・グラハム、ゾフィーはなんとバーバラ・ボニー。指揮はエッシェンバッハで、オケはウィーンフィル、録音場所はウィーン楽友協会大ホールにて1998年収録。いやー、すばらしい。
エッシェンバッハのタクトはかなりたっぷりと歌わせる感じで、比較的遅いテンポ。しかし、こういう歌手名義のアルバムだと、テンポ取りなんかのイニシアティブは誰がとるんだろう? エッシェンバッハなのかフレミングなのか。
フレミングの声は、すごく柔らかく優しさに溢れていて、母性愛を感じます。フェリシティ・ロットがある種貴族的上品さを持っているのに比べて、もうすこし僕らの目線まで降りてきてくれている感じです(ロットがお高くとまっている、ということを言いたいわけでは絶対にないのです。ロットも大好きですよ。でないと映像観ても泣かないですよ)。
フレミングは、ワーグナー歌い的ではないですし、シュトラウスオペラにあっても、エレクトラやサロメは似合わないです。プッチーニオペラでも似合う役があるだろうか?? アマゾンをザッピングしてみても、やっぱり、ヴァーグナーは録音していないみたい。Wikiには、ムゼッタを歌ったことがあると書いてあるけれど、ムゼッタ的じゃないよなあ。もっと大人な女性の役が似合います。
それにしても、このアルバムは僕にとっては本当に理想的です。「ばらの騎士」と「カプリッチョ」を一挙に楽しめるのですから。
ばらの騎士のあらすじも書きたいなあ。。
西田敏行化計画その3─「ばらの騎士」の思い出
ばらの騎士。最近、私がずっと泣いているオペラ。
これまで聞いた実演をまとめてみると…。ちょっとお恥ずかしいのですが。
1. 2003年7月20日:二期会 @東京文化会館
2. 2007年6月9日:新国立劇場@オペラパレス
3. 2007年7月2日:チューリヒ歌劇場@オーチャードホール
4. 2007年11月23日:ドレスデン国立歌劇場@NHKホール
5. 2009年1月25日:ペーター・シュナイダー&東京フィル@オーチャードホール(ばらの騎士組曲)
6. 2010年1月3日:ニューイヤーオペラコンサート@NHKホール(最終部三重唱のみ)
7. 2010年1月10日:尾高忠明&N響@NHKホール(ばらの騎士組曲)
「ばらの騎士組曲」や最終幕三重唱のみも含んでますが、どれも私にとっては重要なのであえて。
一番感激したのは、2007年6月9日の新国立劇場公演です。あれを超える体験をこれからできるかどうかわからない。ないかもしれない。ポイントは4点。
1. ペーター・シュナイダーの絶妙なタクト
2. カミッラ・ニールントの歌唱、演技、容姿
3. エレナ・ツィトコーワの深く濃い声と、ボーイッシュで精悍なオクタヴィアンの演技
4. ジョナサン・ミラーのフェルメールのようなオランダ絵画的淡い色調にまとめられた舞台と演出。
トップの写真は、マルシャリンのカミラ・ニールントと、オクタヴィアンのエレナ・ツィトコーワ。お二人ともすばらしかった。
当時の記事を読み直してみると、
https://museum.projectmnh.com/2007/06/09221553.php
相当感動してます。いま思い出しただけで涙が流れてきた。BGMはフレミングですけど。フレミングについてはまた明日。
西田敏行化計画その2──クライバー「ばらの騎士」
このところ食事しながら音楽番組を見る感じになっています。昨夜見たのは、クライバーの振るあの「ばらの騎士」です。ウィーンで振ったほうですね。もうおなじみ。何度取り上げたことか。
* 指揮=カルロス・クライバー
* 管弦楽=ウィーン国立歌劇場管弦楽団
* マルシャリン=フェリシティ・ロット
* オクタヴィアン=アンネ・ゾフィー・フォン・オッター
* ゾフィー=バーバラ・ボニー
* オックス=クルト・モル
ばらの騎士で私が好きな場面を上げてみると
# 第一幕:序奏部からオクタヴィアンが朗々と歌い上げる場面まで
# 第一幕:マルシャリンが嘆きを見せる最後の場面
# 第二幕:ばらの献呈
# 第二幕:献呈後からオックス登場までの、オクタヴィアンとゾフィーのダイアローグ
# 第二幕:オックスのワルツ
# 第三幕:最終幕の三重唱以降
いまのところはこんな感じでしょうか。もちろん、ここ以外もすばらしいんですがね。
ともかく、「ばらの騎士」は、僕にとっては、何度も観たり聴いたりした大切なオペラです。
今回演奏をつまみ食いして見聞きして発見したこと。なんども思っていることですけれど。
カルロス・クライバーの指揮姿って、すごく格好が良い。もちろんオケを牽引する力は並大抵のものではない。この、豪華絢爛であまりに難易度の高い楽曲を手中に収め、美的価値が極限まで高める力は真の芸術家だなあ、と。洒脱で名状しがたい酩酊感をともなう国宝級の演奏です。
それから、バーバラ・ボニーのすばらしさといったら! 私は何人かゾフィーを聴きましたが、この方ほどのゾフィーはそうそういらっしゃらないのではないでしょうか。そうですね、清らかな若々しい声は、高音域まで豊かな倍音を含んでいて、ばらの献呈の場面の最高音域にあっても音の勢いが減衰することなく高いレベルで持続しています。
それでは、感動的な場面をいくつか。
まずはばらの献呈の場面。シュトラウスの数ある美的極地のひとつに数えても良いでしょう。オッターもボニーもすごい集中力と緊張感で、本当にすばらしい。
続いて、最後の三重唱。ロット、オッター、ボニーの歌唱と演技には脱帽。ここで私は泣いたわけです。
それで、昼休みに「ばらの献呈」からオックス登場と、最終幕の三重唱以降までをiPodで観ていたんですよ。で、また、涙出てしまった。会社なのに、お恥ずかしい。職場みたいなある種戦場にあって、なんだか、現実と夢の境を超えて、その落差におののいたのかもしれない。
というわけで、また西田敏行状態。2009年末の紅白でも絢香の歌を聴いて泣いてましたよね。奥さんは、西田敏行が泣きキャラだということ知らなくて、感動していたらしいのですが、あとで西田の泣きキャラ具合を聴いてすこし興ざめだったみたいです。最近、男、特に中年男が泣くのがはやってます?? 徳光和夫も、「ボエーム」を観て泣いてたしなあ。