晴天の西新宿から初台へ──新国立劇場「愛の妙薬」その1
はじめに
「愛の妙薬」見て参りました。いやあ、ちょっと舐めてかかっていました、わたくし。大変に反省しております。「行くのやめようかな」なんて考えていた私は本当に愚者以下です(なぜって、最近のこのブログのコンテキスト下にあっては愚者といえば英雄ですから)。
今シーズンは、「オテロ」、「ヴォツェック」、「トスカ」、「魔笛」、「ジークフリート」、「神々の黄昏」、「パルジファル」と立て続けに重いオペラばかり見ておりました。それで、「愛の妙薬」はプレミエだというのに、イタリアオペラは苦手なので、みたいな甘えた考えでいたわけですが、本日、その意見は180度方向が変わりました。「愛の妙薬」、このオペラも妄念横溢中。これも一日じゃかけません。というか、本日もあまりに充実した一日で、なんだか夢みたいです。明日からは、「組織」へ戻りますけれど。
オペラの前
今日もカミさんが友人達と新宿でランチをするとのことで、私も濡れ落ち葉のようにカミさんについていって、高層ビル群の一つのイタリアンでランチをご一緒にいただきました。とっても良い天気。今日のカミさんの友人達も良い方ばかり。女性五名(一名は小学生)の中に入りましたが、居心地の悪さもなく、楽しいひとときを過ごせました。というか気を遣ってくださったんです。本当にありがとうございました。
1時間ばかりで私は中座して、初台に向かいました。ちょっとぎりぎり。普通オペラやらコンサートには遅くとも45分前には到着するようにしていますが、今回はルール逸脱でした。
新国到着
いつものように新国の入り口の生け花は素敵です。
で、今日は本当にショックでした。この罪のないはずのあらすじの裏に、こんなに重大でアクチュアルな問題が隠されているだなんて。あー、オペラトーク行っておくんだった。
あらすじ
というわけで、まずは「愛の妙薬」のあらすじの把握から。予習の段階ではきわめて単純に思えました。ずばり三角関係です。
ある種ちょっと木訥で純粋なネモリーノは、女農場主アディーナに恋をするんですが、男前の軍曹ベルコーレが現れてアディーナに求婚する。アディーナもまんざらではない感じ。でもちょっとネモリーネの態度も気になる。私が結婚するんだから、もう少し焦ってもいいんじゃないの? みたいな。
実は、単純素朴なネモリーノは、怪しい薬売りのドゥルカマーラから、「愛の妙薬」を買っていたのです。これ、「トリスタンとイゾルデ」の話に出てくる媚薬と同じという触れ込みなんだが、実は単なる安ワインに過ぎない。効くわけないんだけれど、一日経ったら効果が現れると信じ込んでしまう。だから余裕かましているんだけれど、アディーナがベルコーレと今日結婚しちゃうおう、という話になってしまったので、あわてて、頼むから明日に延ばして、と泣き言を言う始末。
ネモリーノは居ても立ってもいられず、またまたドゥルカマーラから「愛の妙薬」を買わなければ、ということになるんだが、お金がなくて買えない。そこで、ネモリーノは、軍曹ベルコーレから軍隊へ入営することを条件になにがしかのお金を入手し、「愛の妙薬」(もちろん安ワインなんだけれど)を買ってのんでしまう。
そうこうするうちに、病気にかかっていたネモリーノの伯父が亡くなり、ネモリーノに遺産が転がり込んでくるという噂が広まる。町中の女性という女性がネモリーノに色目を使い始める。これぞ「愛の妙薬」の効果! 驚いたアディーナはベルコーレを捨ててネモリーノと結婚してめでたしめでたし。偽薬である「愛の妙薬」がなんだか本当に効き目が出ちゃったよ、あはは、みたいな。
でもですね、ことはそう簡単じゃないんですよ。ここに隠されたテーマは実に興味深く、私の明日とも関係があるのです。
続きはまた明日。
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