Strauss: Capriccio Eberhard W醇Bchter、 他 (1990/10/25) EMI |
ドレスデンで見たカプリッチョの余韻に浸るべく、伯爵夫人のモノローグの部分、最終場を聞いてみたのですが、最終場への導入部分、月光の音楽が実に美しいのです。シュトラウスのオペラへの愛情を感じることができます。
伯爵夫人はこのオペラにあっては「オペラ芸術」の象徴として、詩人、音楽家からの求婚に苦しむわけですが、彼女はどちらの求婚をも受けることはできない。逆に言うと、詩と音楽は不可分であり、どちらか片一方だけを選ぶことはできない、と言うのです。シュトラウスは音楽の才能だけではなく文学的才能にも恵まれていたのですから、こうした不可分性についての考察を「カプリッチョ」というオペラの中で検討して見せたのです。それも、諧謔味あふれる旋律や、甘美な旋律を交えながら…。
このオペラの成立時(1941)にはすでに十二音音楽が確立されていますし、ベルクのオペラ「ルル」も完成(1928:正確には未完ですが…)していた時期です。そういう意味では時代遅れと揶揄されてもおかしくはないオペラではありますが、失われた甘美な時代を想起させる強い力を持ったオペラなのです。