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辻邦生全集〈2〉異国から 他
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ここのところ、塩野七生さんや犬飼道子さんの本を読んでばかりで、辻先生の本をあまり読めていません。それでも、先日は「モンマルトル日記」を散漫に読んで、自分を鼓舞してみたりしていましたが。 そこで、何冊か辻先生の本を紹介してみようかな、と思い立ちました。初めて辻先生の本をお読みになろうか、という方々をターゲットにして、何冊か紹介してみようと思います。

まずは、「ランデルスにて」という短篇から。この短篇は、私が読んだ二つ目の辻作品です。一つ目は「樂興の時 桃」でしたが、学校の図書館にあった短編集の中からランデルスにて、を読んだのがはじまり。これを読んでから、すっかり辻文學の虜になってしまい、今に至るわけです。

美しい北欧の女性と知り合う主人公。女性の気の毒な身の上話を聞かされ、同じホテルの隣同士に止まるのだが、そこに現れたのは……。

まず始まりがすばらしい。列車が北欧の駅を通過していく様子が、駅名の羅列で表される。これがもうなんとも異国情緒を書き立てるだけではなく、重苦しい北欧の冬の空気が本から流れ出してくるのですね。そうして一気に物語世界に飛び込んでいくわけです。 そして最後に突きつけられる宿屋の主人の言葉。この言葉にぐさりと来たのは、主人公だけではない。読み手の我々も匕首を突きつけられたような気分になります。そして終幕部もやはり、北欧の駅名の羅列……。くぐもった声で発音される北欧語が陰鬱な空気を醸成します。

この話、読み終わってからもズシンと何かが来るのですよ。人間とは、人の間でしか生きられないというのに、とかく自分のことだけを考えるもの。それも都合の良い解釈で。

  • 初出 1975年「風景」
  • 辻邦生全集第二巻
  • 辻邦生全短篇(2)

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コメント(2)

暑中お見舞い申し上げます。
私も「ランデルスにて」は大好きです。冷たく暗い北国の雰囲気と出会った女性の美しさが官能的な対比となり、鮮やかに心に焼きつきました。そして最後の宿屋の主人の言葉、あれは本当に絶句です。
辻先生は哲学・論理的な反面、霊的なものをとても信じていたようですが、そんなこともうかがえる作品だと思います。

Shushi :

カーラビンカさん、コメントありがとうございます。返信遅れまして申しわけありません。
「ランデルスにて」は本当にショッキングでした。辻先生が霊的なものを信じていたというのは、おっしゃる通りだと思います。奥様のエッセイにもそういたことが書かれていたと思います(たしか、山小屋の寝室をめぐっての話だと思いますが)。ところが、そうした霊的なものを越えようと、「おみくじを大吉が出るまで引き続ける」といったこともエッセイにのべられていまして、辻先生の中で、相反するものをかかえておられたのだな、と思っています。まさにカーラビンカさんのご指摘通り、哲学・論理的なものと、霊的なものが同居しているというところだと思います。

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2012 年 2 月 9 日
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