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<< 新国立劇場「愛の妙薬」その2 | 今日から「影のない女」モードになります。 >>

さて、一週間が始まりました。おそらく一年でもっとも忙しい一週間。でも、残業規制で早く帰らねばならない。

新国立劇場の正面玄関を秘密の廻廊から撮った写真。建築的にも大好き。

さて、「愛の妙薬」の記憶が薄れないうちに。書いてしまわないと。

軍曹ベルコーレとリクルーター

軍曹ベルコーレが、ネモリーノを金で釣って軍隊に入れてしまおうとするくだり、私はデジャヴを感じました。あれって、いつも企業がやっていることと同じじゃないですか? 甘い言葉をちらつかせ、待遇のよさやら、軍隊の栄光をアピールする。そうした待遇が相対的に他社に劣ったものであったとしても、そうとは気取られぬように、うまいこと篭絡して優秀な人材を借り集める。

軍隊も企業も組織ですのでやることは変わりません。待遇とはそれすなわち給金に他ならない。それは今も昔も同じ。一度組織に入り込むとなかなか外に出ることができない。仕事の誇りをことさらに強調してみせて、モラールを喚起し搾り取ろうとする。いやあ、15年前の就職活動のことを思い出してしまいましたし、いまでもそういう場面にたまに遭遇するなあ。

そういう意味ではアディーナはインテリです。本を読むことができるということが、彼女の洞察力を豊かにしている。「私のために軍隊に身を売って自由を放棄するなんて!」と感動して見せたりする(これは、アディーナの本気なのかどうかはわかりませんが)。この言葉は、もう本当にわれわれに跳ね返ってくる。真の自由なんてどこにもありませんから。

アディーナの心変わりの理由は?

ネモリーネが遺産相続したかどうかはよくわからない。街の女がうわさしているだけだから。それに、ネモリーノ自身それに気づいた風ではなく、「愛の妙薬」のおかげだと勝手に勘違いしている。そうした状態にあって、アディーナはどこまで認識していたんだろう? 

普通に思うと、遺産を手に入れたがゆえにネモリーノと結ばれることを願う、という風になるんでしょうか。アディーナは金に釣られてネモリーノを愛したのだ、という風に。

けれども、僕にはそうは思えませんでした。むしろ、アディーナは、自分のために軍隊に入営したという事実のほうに衝撃を受けているように思えたのです。それほど、軍隊への入営は深刻な事態であるということなのか。

もちろん一夜で街の女から好意を抱かれる存在へと変貌したネモリーノへの嫉妬心も少なからずあったようですが。

ドゥルカマーラの現代性

彼、今もたくさんいるなあ。商売の三分の二はイメージで成り立つ虚業のようなもの。たとえば、金融商品までいろいろなラインナップがあって、素人ではわからないようなものも多いです。そうした商品を言葉巧みに売っていることを思い出します。銀行のホームページに行くとやたらと仕組みの難しい金融商品が置いてあったりしますし、生命保険も難しすぎてよくわからない。ああいうのは、絶対に銀行やら生保会社が得するようにできていると思って間違いないんだそうです。人の知識のなさにつけ込んだそのやり口はドゥルカマーラと同じ。

でも、ダマされない人もいる。ドゥルカマーレは、「愛の妙薬」を不要だと言ったアディーナを、小悪魔とか、してやられた、とか言って悔しがっている。(小悪魔のところ「ブリッコ」と発音していたように聞こえたんですが、リブレットと辞書を確認すると、イタリア語でbricconcellaとは小悪魔な、という意味があるみたい。

結論

結局アディーナが一番賢く物事を見通している。そして、自らの力で人生を切り開こうとしている。愛の妙薬などに頼らずに自分の力だけでネモリーネを愛想としているのだから。我々はアディーナでなければならない。強くそうありたいと思うのでありました。

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