週末の朝はNHK-FMを聞きながら食事をとります。テレビのニュースは暗鬱ですので、せめて食事時は音楽を聴きながら過ごしたいというもの。
とはいえ、CDを聞くだけだと、なにか外界への拡がりに欠ける、という思いもあり、なるべくラジオを聞いて、外界とつながり新しい「もの」に触れないと、という考えです。
ということで、今日は「名演奏家ライブラリー」を聴きました。今日は、ウィリアム・ウォルトン。英国の作曲家ですが、自身の指揮による演奏がオンエアされていました。
Bassano Ltd – https://www.npg.org.uk/collections/search/portrait/mw69488/Sir-William-Turner-Walton?LinkID=mp04688&search=sas&sText=+William+Walton+&role=sit&rNo=8, パブリック・ドメイン, リンクによる
こればかりは理屈ではありませんが、私は文学でいうと、英米系か独墺系を好むことが多く、音楽もやはり独墺系を聴く機会が多いのですが、英米系の音楽は、幼い頃はエルガーやブリテンを聴くぐらい。その後、ヴォーン=ウィリアムズをよく聴いた気がしていますが、今もそんなに知っているわけではないのです。それでもなお、ウォルトンの曲風には親しみを覚えました。
ウォルトンの音楽は実に鮮やかで、いい意味でキャッチーで聴くものを引きつけます。あまり集中してラジオを聴けなかったのですが、最後に流れた「行進曲《宝玉と王の杖》」は素晴らしかったのです。
1953年のエリザベス女王の戴冠式のためにウォルトンが作曲した行進曲。エルガーの《威風堂々》に似た趣を持ちながら、堂々として優美で、ただただひたすらにその瞬間瞬間の世界に畏敬と感謝を抱くような曲風。この曲を聴いたら、多くの人が、なにかその恩寵にひざまずくのではないか、と思います。エリザベス女王が当時どんな思いで聴いたのか、などと。
BiblioArchives / LibraryArchives from Canada – Coronation of Queen Elizabeth II / uronnement de la Reine Elizabeth II
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この曲、記憶の中にありましたので、おそらくこの30年以内にどこかで聴いたことがあるはずですが、今の今まで忘れていました。奇跡的な邂逅だったなあ、と思います。やはり、ラジオで外の世界とつながると何かしらのシンクロニシティはあるものです。
オンエアされたのは、作曲家自身の演奏だったのですが、Apple Musicで該当する番がよくわからず、聴いたのが、戴冠式の模様を録音したCD。
戴冠の宣言なども聞けるのですが、南アフリカやパキスタンの君主であるという宣言もありまして、戦後の大英帝国の陰りの中にあってもまだ海外領土を持っていた時代だったのか、となにか感慨深いものがあります。いまから70年前のこと。地続きであることを実感できる年代に思えるのは、年齢のせいなのか、あるいはカラー写真のせいなのか、戦後だからなのか……。
それにしても、長い梅雨が続いています。いろいろなことが心配ですが、心配ばかりだと、もっと状況が悪くなりそう。そんな折に「行進曲《宝玉と王の杖》」を聴くのも悪くはないなあ、と思いました。
なかなか安定しない気候で大変ですが、みなさまもどうかお気をつけておすごしください。
おやすみなさい。