カザルス/シューマン「チェロ協奏曲」作品129
シューマン:チェロ協奏曲/ピア カザルス(パブロ) (1995/02/22) ソニーミュージックエンタテインメント |
憂鬱な蒼林を思いおこさせる悲痛なチェロの音色が胸の当たりに鋭い痛みを与えます。作品番号を見ると、ああやっぱり、晩年の作品でした。シューマンはこの曲を作曲した4年後に投身自殺を企図しています。晩年むけて精神状況が非常に悪くなっていき、精神病院に入院することになります。そういう背景もあってか、この曲は本当に聴くのがつらいですね。交響曲第1番「春」のあの若々しい朗々たる空気はどこへ行ってしまったというのでしょうか?
演奏は、カザルスとオーマンディ。カザルスのエネルギッシュな演奏のベクトルは悲劇的方向へと強く向かっているように思えてなりません。それは僕の認知的作用の及ぼすところなのかもしれません。あらゆる表象は主観的作用によって形成されるのでしょうから。しかし、それでもやはり、この曲の持つ水面下でうごめく強い感情の力には圧倒されざるを得ません。チェロとオーケストラの間に交わされる濃密な会話の中には、楽観的なそれを聴くことができるとは思えないのです。時宜を得て聴くべき曲なのかもしれません。しかし、悲劇が人間にもたらす力を信じるのと同じように、この曲(のように悲劇的と思われる曲)と向き合うことは、食事をし、仕事をし、眠りにつくという生活の中にあっても決して忘れてはならない事だと思えるのです。
ディスカッション
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確かに、聴くのがつらくなる曲ですね。実際、本当につらかったです。でも、最近の僕の心境にそっと寄り添ってくれているような気もするのですよね…。そうですか、カザルスは「可哀想なシューマン!」と言ったのですか…。確かに幸せな往生を遂げることはできなかったですね。本当に生きると言うことは難しいことだと思います。
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こんばんは。
この曲の独特の締め付けられる感じはちょっと苦手です。
カザルスが著書の中でこの曲のことにふれて
「ああ、可哀想なシューマン!」
といったのを昔呼んだ記憶があります。
このジャケット写真も孤独感がありますね。