Tsuji Kunio

辻邦生師が著した「小説への序章」は、哲学書とは違う意味で歯ごたえがあり、初めて手に取ってから十年経ってもまだまだ楽しむ(苦しむ?)ことができます。小説を書くことを基礎づけるための粘り強い論理と、芸術家的、小説家的な直感による議論が交錯していて、容易に落ちることのない城のような堅牢さです。

ここでは、小説が普遍的な価値を持つためにはどうあるべきか、個人的所産である文学作品がどうしたら人間一般に受け入れられるのか、人々に対する力をもつことができるのかというという議論が展開されています。

個人的体験と、普遍的妥当性、客観的必然性の結節点を探る試みは、例えばルソーの内的展開などを例にとって、「苦悩」によって主観性を突き詰めたところにある意識一般、間主観性のようなものにあるものとしているのです。自省的になるのは決して客観からの逃避などではなく、むしろ主観を深化させたところで、はじめて普遍性や客観性をもちうるのだ、というアクロバティックな議論。ですが、それしか方法がない、という議論でもあり、超越論的とも言えるわけです。

辻邦生師は、若い頃から哲学に親しんでいて、この本においても哲学的な知識を総動員して展開していく議論も、決して容易に読み解けるものなのではないのですが、この本に向き合う度に新たな発見を得て、少しずつ理解が深まっていくのが楽しいわけです。

小説がどうしたら人々に対する力を持ちうるのか、という問いは、ひっくり返せば、どうすれば文学を享受する事ができるのか、という問いにもつながります。書き手の方法論だけではなく、読み手の方法論としての重要性も、この本の議論において見いだせると言えましょう。

 

Opera,Richard Wagner

Hagen

niebelung_hagen.mid

ハーゲン、とても気になる存在です。グンターの異父弟にして、アルベリヒの息子。奸智にたけた男。そんな男がもし現代に生まれたらどうなっただろう?

企業組織の立場から言うと、絶対に必要な人物でしょうね。もしハーゲンが企業の中に収まることができたとしたら、間違いなく権力を持って出世していくはず。ある種の目的に向かっては手段を選ばず、それが仮に善意に悖るものであったとしても平気でこなしていく。こういうある種の狡賢さがなければ、企業組織で生きていくことは難しいでしょうね。今の世の中においてなら、ハーゲンは間違いなく命脈を保てる。そして「指環」(に相当するもの)もきちんと手に入れるのでしょう。

ですが、そうした時代も少しずつ変わってくるのかもしれません。コンプライアンスな世の中になりつつありますから。まあ、お互いたたき合っている世の中とも言えますけれど。

ハーゲンの動機はレヴァイン盤(図書館から借りてきた)のライナーに載っていたものを載せてみましたが、この旋律が変形して、ジークフリートを呼ぶ不気味な「Haiho!」という呼びかけが加わると途端に背筋が寒くなります。それに応えるジークフリートの純朴さ。あまりに純朴すぎて、だいじょうぶかな、とやきもきしたり、歯がゆさを感じたり……。

そんなことを思いながら、今日は神々の黄昏を聴き続けておりました。

Richard Wagner

サヴァリッシュが振ったバイエルン国立歌劇場の指環のDVD、少しずつ見ています。本当はGWにまとめてみようと思ったのですが、毎日20分弱ぐらい時間を作ってみようと思って、見始めたのです。昨夜で三晩目でした。今の僕にとって、どうしても演出がネックで心の底から堪能できずにいるのですが、それでも、字幕を見ながら音楽を聴き、映像を見ると言うことは、オペラの理解にとっては実に有用だな、と言うことを感じながら見ています。時間があれば今晩も見ようかな、と思っている次第。ルネ・コロさん、巧いのですが、衣装がちょっとなあ……。

一方で、ショルティ盤の神々の黄昏を聴いて音楽的な予習を行うと同時に、以下の本も読んでいます。

ワーグナーと「指環」四部作 (文庫クセジュ)
  • 発売元: 白水社
  • 価格: ¥ 999
  • 発売日: 1987/10
  • 売上ランキング: 295102
  • おすすめ度 5.0

指環の全体の把捉にとても役立ちます。とりあえず三分の一程読みました。指環自体とはそうそう関係ないのですが、ドイツ語のDonnerstag=木曜日は、雷神Donnnerドンナーから来ているとか、Freitag=金曜日は、美神Freijaフライアから来ているのだ、と言うのを知らなくて、ひっくり返りました。辞書を見ると載っているのですが、今まで気づきませんでした。無知蒙昧に反省&知ることが出来て良かったです。

この二週間ぐらいでしょうか、少々指環に魅入っている感じ。今まで知らなかった美しい旋律やライトモティーフを幾つも覚えたりするのは、本当にエキサイティングな体験です。これだから音楽は止められませんし、オペラを聴かずにはいられない、といった感じです。職業にするには大変な世界だと思いますが、こうして聴取者として関わる分にはとても幸せです。

Miscellaneous,Music

クラシック音楽の再生ともなると、気にしはじめると大変なことになってしまいます。

私も5年ほど前に、オーディオを新調しようと思って、情報収集をしました。スピーカはPIEGAというメーカの音が綺麗で澄んでいるなあ、という印象を持ちましたが、左右セットで50万円はなかなか出せないですね。

せっかくスピーカを買っても、マンション住まいなので十分な音を出すことは出来ませんし、しかも自宅にいるのは夜~朝だけと来ているので、音にはますます気を遣わなければなりません。結局オーディオを新調しても聴く時間が限られてしまうなあ、ということで断念したのでした。

結局、音楽を聴くのはヘッドフォンとiPodの組み合わせが多くなりました。

通勤時間や、夜、朝に聴くとなると、結局はヘッドフォンをかぶらざるを得ないのです。

それに、通勤時間に聴くとなると、騒音の中で聴くことになりますので、自ずと音量が上げてしまいます。そうすると音漏れが気になる。しかも、ダイナミックレンジの大きなオーケストラの音は、ピアノの部分は聞こえず、フォルテの部分は音漏れするという状態に陥ってしまいます。そういうわけで、数年前まではダイナミックレンジの比較的小さな室内楽ばかり聴いていたことがありましたね。

ですが、2年ほど前にヘッドフォンをBOSE社のクワイエットコンフォート2に変えてから状況が変わりました。周知の通り、この製品はノイズキャンセリングを導入しているので、通勤時間の騒音をある程度カットしてくれますので、ダイナミックレンジの広いオーケストラ(オペラ)曲のピアノの部分もちゃんと聞こえてくれる。ですので、音量を下げても大丈夫なので、フォルテの部分の音漏れも防ぐことが出来ます。少し高い製品で、値引きなどもほとんど行われない商品ですが、秀逸なヘッドフォンだと思います。あえて難を言えば、低音域が強調されすぎているのではないか、というところでしょうか。でもそれも最初のうち、気になっただけで、だんだんとなれてきたので、最近では全く気になりません。

そういうわけで、知らず知らずのうちに、通勤時間にもオーケストラ(オペラ含む)を聴くことが出来るようになりました。

再生機について言えば、4年ほど前まではソニーのCDウォークマンでしたが、持ち歩くCDが多すぎて荷物が増えてしまっていました。そこで、当時から流行りだしていたiPodを導入したのでした。iPodの音質についてはいろいろな意見があるようですが、私の場合、とにかくたくさんの楽曲を持ち歩きたい、という要件がありましたので、迷わず選択したわけです。気分によって、オペラを聴くか、オケを聴くか、あるいはジャズを聴くかというふうなフレキシビリティを重視したわけです。

高級オーディオにはかないませんが、私の生活スタイルにあった再生環境を持つことが出来て、本当に助かっています。昨日も今朝も、やっぱりこの再生環境で、ショルティ盤のヴァルキューレを聴いています。

Opera,Richard Wagner

昨日は、どうしてもあらがえず、カラヤン盤のヴァルキューレの第一幕を聴いていました。ジークリンデを歌うヤノヴィッツさんの歌に感動しました。透明な声でありながら芯があって、苦悩するジークリンデを巧く歌っておられると思いました。カラヤンの指揮も良いですね。序奏などは、ショルティ盤よりも疾走感たっぷりでした。録音も良くて、(おそらくベルリン・イエス・キリスト教会。ライナーがないので分かりませんが、他の指環と一緒としたら間違いないです)、残響音もほどよい感じです。

とはいっても、まだまだ聴き足りないですので、今日もきっとショルティ盤かカラヤン盤いずれかのヴァルキューレを聴くことになると思います。他にお勧めはあるでしょうか? カイルベルト? クナッパーツブッシュ?

  • 管弦楽==ベルリンフィルハーモニー管弦楽団
  • 作曲==リヒャルト・ヴァーグナー
  • 指揮==ヘルベルト・フォン・カラヤン
  • ヴォータン==バス==トーマス・ステュワート
  • ジークムント==テノール==ジョン・ヴィッカーズ
  • ジークリンデ==ソプラノ==グンドラ・ヤノヴィッツ
  • ブリュンヒルデ==ソプラノ==レジーヌ・クレスパン
  • フンディング==バス==マルッティ・タルヴェラ

Opera,Richard Wagner

Walküre_1

MIDI

ショルティ盤のライナーには、示導動機の譜例が載っています。ヴァルキューレを聴いていて、ジークムントとジークリンデの場面でよく出てくる動機で、ライナーではヴェルズング愛の動機とされています。トリスタンとイゾルデの二幕を思い出してしまいますね。禁忌に触れる出口のない哀切な愛情が歌われます。このあたりの雰囲気、とても好きで、ついつい繰り返して聴いてしまっています。ショルティ盤では、ジークムントはジェームズ・キングさん、ジークリンデはレジーヌ・クレスパンさんです。お二人とも良いですね。この渦巻く愛情吐露の甘美さの中にいつまでも留まっていたいと思うのですが、フンディングやフリッカがそれを妨げる。もちろん二人とも二人なりの信義に基づいていることです。それが人生というものです。

今朝も少し寝坊気味ではありますが、気になっていたフレーズを譜面にすることが出来ました。今日ももう少しヴァルキューレを聞き込んでみようと思っています。って、何日聴いてるんだろう? 意外にもなかなか飽きないですね。これははまってしまったかもしれません。今年の秋には新国立劇場でラインの黄金とヴァルキューレがありますが、どんどん楽しみになってきています。

というか、4月13日、新国立劇場で魔弾の射手をみるのでした。こちらの予習もせねば……。

Miscellaneous

こんな色のパソコンが欲しい!

さてどうしたものか。昔、IBMが出していたThinkpad S30でしたっけ、鏡面仕様の黒くて小さいPCがありましたよね。

http://www-06.ibm.com/jp/pc/thinkpad/pdf/tps3016.pdf

こういうの、また出てくれないかな、と思うのでした。いまのテクノロジなら行けそうな気がします。

というわけで、ブログ村のプレゼントに応募

Opera,Richard Wagner

今日は少々寝坊。(禁じられているというのに)昨夜ワインを少し飲んでしまい、却って眠りが浅くなって、寝坊してしまったというわけ。アルコールは楽しいですが、控えめに……。

さて、今日も朝からワーグナー漬です。ショルティのヴァルキューレを執拗に聴き続けています。ジークムントをジェームズ・キングさんの声が素晴らしく思えます。ニルソンさんのブリュンヒルデは意外と繊細な感じに聞こえます。ホッターさんの丸味のある独特の声。これはちょっと異論ありかしら。ラインの黄金のロンドンさんのほうが好みだな、と思いました。

なんだか無間地獄に堕ちていくような深さをもつ指環の世界。図書館でカラヤン盤とレヴァイン盤の一部を借りてきています。ですが、まだ楽曲の理解が先で、聴き比べはもう少し先でしょうか。そうそう、DVDも昨日少し見たのですよ。サヴァリッシュ盤の神々の黄昏の冒頭部分です。神々の黄昏は急に登場人物が変わってしまうような気がして、少し違和感を感じるのは気のせいでしょうか。

 

  • 管弦楽==ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  • 指揮==ゲオルグ・ショルティ
  • ヴォータン==バス==ハンス・ホッター
  • ジークムント==テノール==ジェームズ・キング
  • ジークリンデ==ソプラノ==レジーヌ・クレスパン
  • ブリュンヒルデ==ソプラノ==ビルギット・ニルソン
  • フンディング==バス==ゴットロープ・フリック

いつも上記のように、役柄や名前などを載せていますが、これをアクセスのデータベースに入力して、エクセルにデータを移し、エクセルVBAでタグと一緒にソースを自動生成、というスキームをやっと作りました。名前を毎回毎回入れるのが面倒なので、効率化です。それでもまだまだ効率出来そうですし、意図と違う動きをしているところもあるので、少しずつ直していこうと思っています。このブログも少しずつ効率化していまして、だんだん更新が楽になってきました。

Italy2007

6時半に起き出す。まだ外は真っ暗。日本でならもう明るくなっている時間だというのに。

今朝早く起きたのは訳がある。一つ目の理由は時間があるうちにサン・ジョルジョ・マッジョーレ島からドゥカーレ宮殿とサンマルコ広場を見ておきたかったから。というのも、マッジョーレ島からスケッチしたに違いないカナレットの絵がミュンヘンのアルテ・ピナコテークにあって、ひどく感動したのである。どうしても実地を見てみたかったというわけなのだ。もう一つの理由は、方角的にみて、朝早く起きていけば、朝日が当たるドゥカーレ宮殿がみられるはずだから。きっとあの「バラ色」の宮殿の壁は朝日に燃え上がり、そこはかとない美しさが立ち上がってくるに違いないのである。

時間を調べておいたヴァポレットに乗ってサン・ジョルジョ・マッジョーレ島へ。明け方のジュディカ運河の空気の冷たさ。寒くて仕方がない。ほどなく、島に到着。まだ陽は昇らないが、群青色に空は染まりつつあり、ドゥカーレ宮殿と鐘楼が淡い光を浴びて佇んでいる。

Venezia_Sunrise

 さすがに暗くて、ちゃんとした写真はまだまだ撮れない。三脚があれば良いのだろうけれど。ああ、小さい三脚を持ってくるんだったなあ。

Italy2007

いよいよ夜明け。太陽が姿を現す。

Italy2007

朝釣りをするフィッシャーマン。意外にもヴェネツィアで釣人を見かけることが多かった。

Italy2007

島の東側はヨットハーバーになっている。マストが何本も立っているのを見るのは壮観。

Italy2007

そう! これがカナレットの描いたドゥカーレ宮殿の構図だ。それにしても、朝陽に燃える宮殿の美しさ。早起きは三文の得というけれど、それ以上の感動だ。