久々にマイケル・ブレッカーを聴いてみました。というのも、今晩、大学の時にジャズを一緒にやっていた先輩方とお会いするので。最近、ジャズ聴いていないので、話すネタがないと思います。たぶん、いろいろ聴いて終わってしまうんだろうなあ。僕がクラシックの話を開陳してもあまり意味がなさそうですので。
それで、久々に聴いたのがこのDon’t try this at homeというアルバムでして、マイケル・ブレッカー名義の二枚目のアルバムです。大学の頃はこのたぐいのCDばかり聴いておりました。何年経っても曲を覚えているもので、マイケルの複雑怪奇なインプロヴァイズもかなり覚えていて血液が逆流する思いです。懐かしい。
やはり、もうサックスは吹けないなあ、と改めて思いました。偉そうですが、自分の審美眼が、自分の能力とか可能性を超えてしまったので。
そういう状況に陥ったとき二つの選択肢があります。
1)審美眼に追いつかなくなった時点でやめてしまう。
2)批評(審美)と、実践(演奏)を分けて考える。
おそらく2)のほうが賢いやり方だと思いますが、僕はどうにも1)の方向に行ってしまいます。
演奏する行為自体は楽しいので、その楽しさを大事にすればいいとも思ったりしたこともあるのですけれど。まあ、楽器は練習しないと当然うまくなりませんが、サックスの練習は勤め人に撮ってはそうそう手軽にできるものでもないです。
今晩、先輩達に会えるのでワクワクしています。昔は、週末三時間地下のスタジオにこもって練習したりしたなあ、なんて懐かしい思い出。最近のジャズ事情とか聞けるといいなあ。
アルバムの話を。
01 – Itsbynne Reel
02 – Chime This
03 – Scriabin
04 – Suspone
05 – Don’t Try This At Home
06 – Everything Happens When You’re Gone
07 – Talking To Myself
08 – The Gentleman & Hizcaine
1曲目、Itsbynne Reelは、カントリー風の音楽なんですが、マイケルがEWIの卓越した演奏でヴァイオリン──あるいはここではフィドゥルと言った方がいいかもしれませんね──とユニゾンで印象的なフレーズを繰り返す。バッキングのピアノも実にカントリー風なんですが、マイケルがテナーで入ってくると、これがまた色調ががらりと変わって、アドレナリンが充溢してきます。ああ、やっぱり音いいなあ。
4曲目のSuspneは、たしかギターのマイク・スターンの曲。マイク・スターン的変態旋律がオーソドックスな循環進行に乗っかっているんですが、ジャジーでありながら、コード解釈が新鮮で(今となってはもう普通なんですけれど)ぐいぐいとあらぬ方向に引っ張られるスリルがたまりません。こういうスリルは、ベルクを聴くときの感覚と似ています。マイケル・ブレッカーの循環、たまりませんね。懐かしすぎる。
やはり一番いいのは5曲目のDon’t Try This At Homeです。綱渡りのような緊張感の上で自由なインプロヴァイズ。ここはメンバーが良くて、ピアノはハービー・ハンコック、ギターはマイク・スターン、ドラムはジャック・ディジョネット、ベースはチャーリー・ヘイデンですからね。ハービーのバッキング、格好いいです。ディジョネットもディッジョネットらしい暴れっぷりで、言うことないです。ブレッカーもあおられて、興奮度120%というところ。名演です。
ちなみに、このジャケット写真も格好いいですよね。テナーを意のままに操る。しかも、アクロバティックで斬新に、というメッセージが伝わってきます。
ジャケットの裏には、テナーだけが残り、マイケルの写っていない写真。今となってはこれが現実です。マイケル亡き後の寂々たる思い。
Michael Brecker/ Don’t Try This At Home