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Wagner

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Wagner: Der Ring des Nibelungen

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うーむ、難しい話しになってきました。

いったいジークフリートとブリュンヒルデを結びつけたものは何か? 

指環?  ファフナーの返り血? つまり、ミーメの心の中を読めたようにブリュンヒルデの胸中を推し量ることが出来たから、口説き落とせたのか? あるいは、運命、だなんていう月並みな言葉でしか説明できないのか。

昨日まで、私は、世界を支配する指環か、ファフナーの返り血がジークフリートを一瞬にして成長させたとのでは、と思っていましたが、どうにも袋小路に入り込みました。私はブランゲーネの媚薬のような何かが、ブリュンヒルデとジークフリートを結びつけたのではないか、と推測していたのですが、方向を間違えている気がしてきました。

ちょっと状況を整理しますと......。

ブリュンヒルデの覚醒からしばらくの間、ジークフリートをどんなに心配し、愛していたか、と歌い上げます。これは、ヴォータンに背き、ジークムントを助け、ジークリンデを庇っていたことを示しているのですが、ここではかなり踏み込んで「愛していたのだ」と歌う。まあ、長い眠りから覚めて忘我の状況にあるので、いささか感情的なのでしょうか。

ところが、ジークフリートが求愛が続くと、いささか調子が変わってきます。かつて神聖なる戦いの女神であったブリュンヒルデが、ヴォータンの孫とはいえ、人間の男の妻となり従うということの屈辱を切々歌い始めます。

それでもなお、ジークフリートは迫り続ける。もちろん詩的な言葉で(どこで覚えたんだろう? でもすばらしい)。

すると突然、まるで点から光が差し込んだように「ジークフリート牧歌」のフレーズが差し込んでくるのです。最初のブリュンヒルデのフレーズは短調ですが、まだ心が揺れていることがわかる。ですが、その後徐々に高揚へと向かい、クライマックスへと導かれる。

ジークフリートが、どうしてブリュンヒルデの心を動かしたのか。あるいは、ブリュンヒルデはなぜ心を動かしたのか。リブレットを読んでいるのですが、なかなか分かりません。

クライマックスで歌われるのは永遠の愛などではありません。ブリュンヒルデは、ヴァルハラと神々の破滅を歌い、一方でジークフリートこそが永遠であると歌います。ジークフリートはブリュンヒルデこそ、永遠で恒久で宝なのであると歌います

最後に二人が歌う言葉は「ほほえむ死」。Lachender Tod ! ここ、実にニーチェ的。永劫回帰の中で、一度でも幸福を感じ、肯定せよ、という強い意志。これは、新国立劇場のパンフレットで茂木健一郎氏と山崎太郎氏の対談の中でも述べられていました。

すこし指摘しておきたいのは、神として永遠の存在だったブリュンヒルデが、神性を奪われ人間という有限の存在へと落ちたと言う事実。これは、まるでイエス・キリストの受肉にも見えてきます(アタナシウス派=ローマカトリックにおいてはイエスは神性を失いませんでしたけれど)。

「神は死んだ」と言ったニーチェ。

次は、どうやらニーチェの世界に踏み込まなければならなくなりそうな予感。けれども、ここでいう「神」とは、ニーチェの言う「神」とは少し位相がずれているとも考えています。昨日書いた通り、神が貴族階級だとしたら。

まだ、ブリュンヒルデをジークフリートが口説き落とせた理由は分かりません。底なし沼にはまり込んだ気分で、まだ諦めずに考えます。

会社では、難しいプログラムを読む後輩を「こんなもの、人間の考えたものだ。考えればかならずわかるんだ!」といって励ましていますが、さすがにワーグナーの考えたもの、あるいはそれ以降蓄積された解釈群ともなると、人間が考えたというような生半可なものではないようです。

明日も頑張ります。

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